『メンタルに効く西洋美術』
宮本由紀著
マール社
でもおすすめする理由はそんな先生の本であるということだけではなく、読んでみたらわかる内容の素晴らしさです。
私が、先生からお聞きした西洋美術史を教えるときにとても大切にされていること。
・プライマリーソース(一次資料)
・リベラル・アーツ
プライマリーソースとは、アーティストの手紙、自伝、インタビューなどの本人の言葉。そして当時の書籍などのこと。
そしてリベラル・アーツと呼ばれるアートとも深くつながっている、当時の文化、哲学、宗教や政治などについても学べるようにすること。
だからこの本にも、アーティストのその時の心境が伝わってくるような言葉や、アートの奥深さを知ることができる当時の社会のことなどもたっぷりと紹介されています。
本のあとがきには、先生の熱いメッセージが込められていました。
本当は全部書いてしまいたいくらいだけど、それはぜひ本を購入して読んでいただきたい。
ここには、プライマリーソースのことに触れられたところをご紹介します!
講座で私が心掛けていることは、アーティストたちが何を考えどう生きたのかを、彼らの生の声、つまり手紙や書物として現在に伝えられている、生き生きとした言葉から学ぶということです。リアルな言葉は読む者をインスパイアするパワーに満ちています。皆さんにもできるだけ多くのアーティストの言葉に触れて欲しい。その想いからこの本を書きました。
本の内容は、12人のアーティストとコレクターの人生を、本人の言葉、作家・コレクター・批評家たちの言葉などから見つめていったものです。
今は知らないという人がいないアーティストでも、今の私たちと同じように悩み・苦しみ、でも自分の情熱を忘れずに生きていた。
そんな12人のアーティストの物語となっています。
その12人とは
ポール・ゴーギャン
フィンセント・ファン・ゴッホ
ミケランジェロ・ブオナローティ
ウィリアム・ホガース
メアリー・カサット
ルイジーヌ・ハヴェマイヤー(コレクター)
ラファエロ・サンティ
クロード・モネ
ジェームス・ティソ
ドロシア・ラング
アンセル・アダムス
レオナルド・ダ・ヴィンチ
時代、表現方法などもさまざまな人が取り上げられていて、読み応えたっぷりです。
どんなに時代がさかのぼっても、国が違っても、偉大なアーティストでも同じ人間なんですよね。
こんなことで悩んでいたのか・・・
こんな風に支えてくれる家族・仲間がいたんだな・・・
そこから今の私たちが教えられることはたくさんあります。
私はまだまだ宮本先生の足元にも及びませんが西洋美術を教えています。
そして鑑賞を通して、自分の長所や自分ではだめだなーと思っている短所のバランスから生み出される素敵な個性を認めること。
個性を認めて自分を好きになって、好きなことややりたいことを追求すること。
自分自身をアーティストのように表現できる人を応援したいと思っています。
今回この本読んで、いや読む前からか・・・もっともっと私は勉強しないとと思ってます笑
先生とお話させていただいた時にも出てきたことなんですが、西洋美術を一生勉強していくんだと。
知れば知るほど、疑問が出てきて、それはずーと続いていく。
でもそのことが楽しくて、こんな風に好きなことがあることは幸せだよねと。
そしてこの本のオススメポイントもう一つ。
宮本先生を通じて知り合いになれた土井智子さんの可愛くて素敵なイラストも、読む時のお楽しみですよ。
写真は人物をありのまま伝えてくれるけど、イラストだとその人をもっと近く感じさせてくれるのはなぜだろう。
どれもいいけど私はゴーギャンが一番好きかなー
最後となりますが、本を読み始めて思わず泣いてしまったところを紹介して終わりたいと思います。
エピソード1で「フィンセント・ファン・ゴッホの思い出」というゴッホを支え続けた弟のテオの妻の回想録から紹介されているテオの想い。
フィンセントの場合は、やっぱりこのまま同じように助け続けるよりほかないんだ。彼が芸術家であることはまちがいないし、いま制作している作品がいつもうまくいっているわけではないけれど、いつか必ずものになる日がくる。そのとき彼の作品は崇高なものになるだろうけど、そうなったとき彼にふだんから制作させてあげていなかったとしたら、ひどく残念なことじゃないか。どれほど浮世離れした兄でも、制作がうまくいけば、その絵が売れはじめる日はきっとやってくるよ・・・。