365日絵のなかで”旅”をする イタリア 旅するアート鑑賞 風景画

カナレットの「サンマルコ広場」【365日絵のなかで旅をする】

今回の旅は、18世紀のイタリア、ヴェネツィアのサンマルコ広場をめぐる旅。絵はヴェネツィア生まれで、この街を知り尽くした画家カナレットが描いたサンマルコ広場を描いたものです。

案内してくれるのは、カナレットをイギリスに売り込んだ代理人のジョセフ・スミス(1682-1770)。

実在のヴェネッツィアに住んでいたイギリス人で、銀行家、商人として成功。芸術家のパトロンでもあったのですが、カナレットに出会い20年にわたる関係の中たくさんの絵をイギリスへ売り込んだ人物です。

今日の案内人は、カナレットの代理人のジョセフ・スミス

私、ジョセフ・スミスは、ヴェネツィアに住むイギリス人商人として、この美しい水の都でたくさんの美術品を扱ってまいりました。私の収集活動は幅広く、版画や書籍などさまざまな芸術品に及びますが、中でも特別な関心を寄せているのが絵画です。その中心にいるのが、カナレット、本名ジョヴァンニ・アントニオ・カナルです。

このサン・マルコ広場を描いた絵には、私たちヴェネツィアに住む人間だけでなく、遠く外国からやって来た人々をも魅了してやまない何かがあります。カンパニーレとトッレ・デル・オロロジオが、まるで一緒に眺められるかのように描かれています。しかし実際には、これらの建物をこのように一望できる場所は存在しません。カナレットは、ヴェネツィアの美を最大限に伝えるため、現実を少し曲げることをいとわなかったのです。

さらに、この絵は少し高い視点から描かれていることに気がつかれましたか?広場の石畳のラインが、見事な遠近法を生み出しており、まるで私たちをその場所へと誘い込むかのようです。

1720年代、若き日のカナレットとの出会いは、私の人生における重要な転機となりました。屋敷を飾るための景観図を最初に依頼した時から、関係は始まりました。彼の才能を見出し、その後20年にわたり代理人として活動する中で、イギリス貴族からの注文を確保し、カナレットの作品をイギリスに紹介する役割を果たしました。彼の作品は私の館を飾るだけでなく、イギリスの多くの邸宅にも飾られることとなりました。これらの作品は、ヴェネツィアの永遠の魅力を伝え、街の美を再発見させることになるでしょう。

当時、イギリスからグランド・ツアーの一環としてヴェネツィアを訪れる貴族たちは多く、彼らはこの美しい水の都の記憶を持ち帰りたいと望んでいました。カナレットの絵は、その願いを叶える完璧な手段となりました。私は、代理人として、作品をイギリスへ送るための額装、荷造り、輸送を効率よく手配したのです。

カナレットの絵には、ヴェネツィアの運河や建築物が精密に描かれており、特にサン・マルコ広場の絵は、彼の技術と芸術性の高さを示しています。それは、ヴェネツィアの貴重な歴史的記録。私とカナレットの協力関係は、単にビジネスパートナーとしてだけではなく、互いに尊敬し合い、芸術への情熱を共有する真の友情に基づいていました。カナレットの作品を通じて、ヴェネツィアの永遠の美を世界に伝えることができたのは、私にとって大きな誇りです。



サンマルコ広場の鐘楼と時計塔が同時に見えている絵

カナレット(本名ジョヴァンニ・アントニオ・カナル)は、1697年ヴェネツィアで、劇場の背景画家をしていた父のもとに生まれました。父から遠近法の基礎をしっかりと教わりながら働く中、カナル親子の呼び名を区別するために”カナレット”(小さなカナル)と呼ばれるようになったのです。

生涯描いたのは、ロンドンに滞在した10年の絵を除けばヴェネツィアの絵ばかり。ここまで詳細に広範に描いた画家はいないわけで、ヴェネツィアの記録としても価値があります。

カナレットがカメラオブスクーラという、遠近法を正確に描くための強力なツールを使用していたとされる理由の一つは、驚くほどの正確さです。柱の大理石の模様、建物のドアの装飾、屋台の日除けにかかる影など見てください!でも正確なだけではなく詩的な情緒が溢れています。このバランスがカナレットの作品を特別なものにしています。

当時は景観画家として珍しい選択をしました。まだ、景観風は歴史画や宗教画、さらには肖像画や風景画に比べても評価されていなかったからです。都市景観図が発展していたのはオランダです。オランダではフェルメールのように100年前にもデルフトの細部を忠実に描く絵が登場していました。

カナレットの作業方法には、現場でのスケッチから始まり、アトリエでの構成がありました。彼は想像力を駆使して自由に改変を加え、ヴェネツィアの風景を劇的な効果で捉えました。そうやって描かれたのが景観図と、カプリッチオという空想的な風景画。実際には見えないはずの場所から見える風景を描いたり作品にドラマを加えているのです。

この絵でも、この地点から見ると左のカンバニーレ(鐘楼)と右に見えているサンマルコ時計塔は同時には見えないのです。

ジョセフ・スミスの関係は、カナレットの作品がイギリス貴族に紹介される大きな橋渡しとなりました。スミスが収集したカナレットの絵は、油絵50点、素描は150点ほどあったようです。その後財政難になりコレクションの大半を、ジョージ3世に売却しました。今でも英国王室コレクションになっています。

その他にも今でもカナレットの作品が飾られている邸宅がたくさんあって、かつての人気ぶりが伝わってきます

ヴェネツィアを旅したことありますか?

ヴェネツィアの街の風景は16世紀から大きくは変わらず、歴史や美しさを残す都には今も多くの観光客が訪れていて、今は住民数よりも観光客の方が上回っている状態らしい。

そのヴェネツィアの人口は2022年には300年以上ぶりに50000人を切ったそう。

私も2度ほど行くことができ、細い道を歩き回り、時に迷子になりながら小さな広場を見つけたり、素敵なお店を見つけたりと楽しみました。いつか水に沈んでしまうとも言われているヴェネツィア、また必ず美しい景観を見に行こうと思っています。

ところで、このサンマルコ広場。ナポレオンが "ヨーロッパで最も素晴らしい応接間 "と評したそうです。宗教・文化・政治の中心。

広さは縦180メートル、横は70メートル。(広さはこのサイトを参考にさせていただきました)カナレットの絵でもわかりますがかなり広い。運河に囲まれて細く、そして小さな道と橋からできているような街にこんな広場を作ったなんて。

カナレットの立つ背後には、サンマルコ寺院が立っている。通常ならそちらを描いた絵が多いように思うのだけど、この絵は反対から捉えていてそれもまた、サンマルコ広場の別の美しさを見せてくれるようです。

タイトル: サンマルコ広場(The Piazza San Marco)
画家:カナレット(本名ジョヴァンニ・アントニオ・カナル/ Canaletto (Giovanni Antonio Canal  1697-1768))
制作年:1739年ごろ
所蔵館:デトロイト美術館






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