雪中の狩人
ピーテル・ブリューゲル1世
1565年
ウィーン美術史美術館所蔵
雄大な自然や農民の生活を、人間社会への風刺を織り交ぜて描いたピーテル・ブリューゲル一世。
丘よりさらに上の視点から、雪に覆われた農村を見下ろすように描いているこの作品。現在のベルギー、オランダのブラバントの農村で暮らす人々の日々の暮らしが、丁寧に描きこまれています。
ブリューゲルの作品はどれも細部まで見るのが本当に楽しいです。
この絵は、ブリューゲルの友人でアントワープの金融業者であった裕福なニクラース・ヨンゲリンクの依頼で描かれた一枚。この時ヨンゲリンクは6枚からなる連作季節画を注文したそうです。
描かれているのは冬12月・1月の風景。というのも、左には12月の風物詩とも言われる農作業風景が描かれているからです。
取れかかった看板がかかる建物の前で、数人が火の周りで作業しているのが見えますか?当時のこの地方の農村では、12月に豚の毛焼きといって、解体した豚の毛を焼き小分けにしてソーセージや塩漬けにして保存食にしていました。看板がかかっているから、飲食店の作業風景なのでしょうか。大人やっていることをじっと見ている子供かな?も描かれていますね。
絵が描かれたのは1565年。この年は大寒波のせいで、北ヨーロッパは猛烈な寒さに襲われたといわれています。雪に埋もれているし、全体に暗い色使いも寒さを余計に感じさせます。どんよりとした空の色と同じような氷の張った水面の色も、厚く氷が張っているのだろうなぁとブルッと寒さを想像してしまう・・・
でも寒さを忘れ氷の上では、たくさんの人が本当に楽しそうに遊んでいる様子が描かれてます。
こんなに小さいところだけど、一人ひとりみんな違う。
スケート
カーリング
コマ回し
ホッケー
走り回っている子供や、転んで倒れてこんでいる人や、女性の手を引いていう男性の姿も。
450年前の人々の冬の遊びを百科事典的に伝えていると言われるところはこんなところなんですね。
村の向こうには雪に覆われた切り立った山々が見えますね。
ブリューゲルの育った北ヨーロッパのフランドル地方は高低差の少ない地域です。
そんな彼は、1551年にイタリアへ修行旅行に出発します。
イタリアは画家にとっては憧れの地。古代ローマの遺跡やルネサンスの芸術を自分の目で見るためです。
旅の途中で見たのはアルプスの山々です。
この絵の山はアルプスで見た雄大な山の取り入れたもの。
遠景に山があるのとないのとでは、迫力や平野の広がり感も全然ちがいますね。
<本日のアート用語>
季節画
季節画は、暦と絵画が組み合わさった今でいうカレンダーのようなものです。
中世から伝統的に時祷書をいうものが作られていたのですが、この時祷書はキリスト教のお祈りや歌などがまとめられた書籍。月の暦と一緒に豪華な挿絵が描かれていて、有名なところでは1416年作の、ランブール兄弟の「ベリー公のいとも豪華なる時祷書」があります。
16世紀のイタリアでは邸宅に月暦や季節画を飾ることが流行しました。