今回は、このちょっとびっくりして、思わず笑ってしまう肖像画の絵のなかを旅します。
描かれているのは、あの名門ハプスブルグ家の皇帝ルドルフ2世。
上半身を構成しているのは、50種類以上の野菜・果物・花・・・・しかもどれも新鮮で美味しそうじゃないですか??笑
アルチンボルドはこのように独特のスタイルの絵を描きますが、やはりこの絵は中でも一番の驚きと楽しい気持ちを与えてくれる作品だと思います。
画家が野菜や果物で描いた理由や、背後に隠された象徴的な意味を探りましょう。まずはルドルフ2世の案内で、絵のなかへ!
今日の案内人は、ルドルフ2世本人
皆さん、こんにちは。私はルドルフ2世です。アルチンボルドが私を野菜や果物で描いたこの特別な肖像画について紹介します。絵には、私の治世や私が愛する自然と芸術に対する思いが込められています。
まず、絵を見たときに感じるのは驚きとユーモアでしょう?普段の肖像画とは全く違う、ユニークなスタイルにきっと驚かれたはず。私の顔が果物や野菜で構成されているという発想には、アルチンボルドの遊び心がたっぷり詰まっています。
次に、使われている果物や野菜には、豊かさと自然の恵みを象徴する意味があります。梨、リンゴ、さくらんぼ、ブドウ、小麦、アーティチョーク、豆、トウモロコシ、玉ねぎ、キャベツ、栗、イチジクなど、すべての季節の産物が使われています。これらは私の治世の繁栄を示し、自然と人間のつながりを強調しています。
また、この絵には複雑さと精密さが見て取れます。アルチンボルドは非常に細かいディテールにこだわり、植物を丁寧に組み合わせています。この緻密な描写は、私の統治と芸術への深い理解を象徴しています。
彼がこの絵を通じて伝えたかったメッセージは、私の治世が自然の豊かさと調和し、芸術を愛する心によって支えられていることです。皆さんもそのメッセージを感じ取っていただければ私もとても嬉しいです。
ローマ神話の豊穣と収穫の神ウェルトゥムヌスで描かれたルドルフ2世
この肖像画はルドルフ2世の栄光を讃える絵画。それはウェルトゥムヌスとして描かれているからです。
ウェルトゥムヌス(Vertumnus)は、ローマ神話における果物と果樹、そして季節の変化の神です。彼は植物の成長と収穫を司り、特に果樹園や庭園の守護神とされています。農民や庭師から崇拝され、彼の祭りは毎年10月に行われ、収穫を祝う重要な行事とされていました。彼は成熟した果物や豊かな収穫を持つ姿で描かれることも。ローマ時代には、ウェルトゥムヌスの像が市場や果物店の近くに置かれ、豊穣と商売繁盛を祈る対象となっていました。
だから一見奇抜でユニークなこの絵は、ルドルフ皇帝の下で国家が繁栄したことを表す寓意画としての画家のサービス精神の表れなのです。
寓意画(ぐういが)は、抽象的な概念や教訓をシンボルや象徴を通して、深いメッセージを伝える絵です。理解するにためには背景やシンボルの意味を知っていることが重要。だから、インテリ層の宮廷人のために、謎解きの知的な遊びとしても人気だったのです。
中世やルネサンス期に多く描かれました。
現代でも、寓意画の手法は映画、広告、デザインなどさまざまな分野で応用されています。
君主としては評価の低かったルドルフ2世ですが、芸術のコレクターとしては高い審美眼を持っていた彼はこの絵をとても喜んでいたと言われています。
絵の中に描かれている植物は50種類以上だということです。何があるかわかりますか?
麦の穂
洋梨
さくらんぼ
とうもろこし
りんご
ぶどう
豆
玉ねぎ
キャベツ
栗
プラム
ざくろ
カボチャ
オリーブ
いちじく
なす
ズッキーニ
アーティチョーク
桃・・・
花の種類も豊富です。
ルドルフの宮廷はプラハ(現在のチェコ)にあって、そこに博物館のように特別な部屋を作り自分のコレクションを集めていました。芸術や科学を愛した彼のもとには科学者やアーティストなどがたくさん招待されていて、華やかな芸術文化の場所でした。
コレクションは、絵画だけでなく、工芸品、版画、標本、時計、天球儀などさまざま。その後コレクションはウィーン美術史美術館に収められ多くの人々に影響を与えました。
タイトル:「ウェルトゥムヌスに扮したルドルフ2世」(Rudolf II of Habsurg as Vertumnus)
画家:ジョゼッペ・アルチンボルド(Giuseppe Arcimboldo(1527-1593年)
制作年:1590年ごろ
所蔵:スコークロステル城、スウェーデン
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