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ルカス・クラーナハの描く【パリスの審判】

ルカス・クラーナハ(父)
Lucas Cranach the Elder
「パリスの審判」 1528年頃
油彩・板(ブナ)101.9x71.1cm
メトロポリタン美術館所蔵

今日ご紹介するのは、ルカス・クラーナハ(父)の絵。

描かれているのは、「パリスの審判」というギリシア神話のストーリーです。

鎧兜姿のパリスが、3人の女神の中から「最も美しい人へ」と投げ込まれたリンゴを誰に渡すのか悩んでいる様子。

この3人の女神は誰なのか?

なぜパリスは1人を選ばないといけないのか?

そしてその後どうなったのか?

ストーリーを知った後、もしあなたがパリスならこの女神の中から誰を選びますか?

そしてその理由は?

そんなことを考えて絵を見るときっとさらに楽しめるはずです。

絵に描かれている登場人物

甲冑姿で座り込んでいるパリス・・・ トロイの王子
トロイ王の息子で、トロイを滅ぼすことになるという予言によって羊飼いとして育っているパリス。

パリスの傍らに立つヘルメス・・・ゼウスに仕える伝達の神

3人の女神たち・・・ヘラ(全能の神ゼウスの正妻で最高位の女神)
アフロディテ(美の女神)
アテナ(戦いの女神)

エロス・・・アフロディテに向かって矢を放とうとしている

なぜパリスは1人を選ばないといけないの?

パリスが審判をくださなくてはいけなくなったのにはこんな理由があります。

ギリシアの英雄ペレウスと海の女神テティスの結婚式に招待されなかった不和の女神エリス。

のけものにされたことを怒って無断で出席します。

そして「最も美しい者に」と書かれた黄金のリンゴを客の中に投げ入れたのです。

そのリンゴを、ヘラ、アフロディテ、アテナの3人の女神は私の物だと争いがおこります。

まさに不和の女神のりんごですね・・・

この騒動を治めるために、全能の神ゼウスはトロイの王の息子パリスにのみ解決させると決めました。

パリスは責任重大です!!

パリスが選んだのはアフロディテ

パリスは森の中で狩りをしているときに道に迷い、馬をつないで眠ってしまいました。

その時、夢の中でヘルメスが現れ、女神たちを紹介しました。

ぜったいに選ばれたいと3人は、交換条件を出します。

いわば賄賂ですね。

この交換条件がかなり豪華です。

ヘラは私を選んだら、世界の支配権を与えると言いました。

アテナは、あらゆる戦いの勝利を。

そしてアフロディテは、世界一美しい女をと。

パリスはこの条件を聞いて美の女神アフロディテを選びました。

そしてスパルタ王メネラウスの妻で、世界一の美女であるヘレネの愛を手に入れるのです。

実はこのヘレネ、神ゼウスとアイトリアの王女レダの娘でもある、半神という存在。

ちょっとややこしいですが、この絡み合い具合がわかっていくと面白くもなります。

クラナハはこの絵では、争いのもとになった黄金のリンゴとしては描かずに、大きな水晶玉を描いています。

ヘルメスが持っている水晶玉が見えますか?

そしてパリスも羊飼いで描かれることなく、豪華な帽子や甲冑姿で王子らしい姿ですね。

夢の中で女神と会うという設定で、うつろな目をしています。

パリスの選択は大きな戦争をひきおこす

世界一の美女を手に入れたパリス。

その後どうなったかというと、パリスの行動が、トロイア戦争(トロイ戦争)を引きがねとなるのです。

パリスは人妻ヘレネへを誘惑し、スパルタ王から略奪して自分の国トロイに連れていこうとします。

怒り狂ったスパルタ王は、兄のミュケナイ王に頼み、ギリシャ連合軍としてトロイ軍と戦うことになります。

トロイア戦争とは、ホメロスの叙事詩「イリアス」で語られる、ギリシア連合軍とトロイア王国の間の10年に渡る戦争です。

ギリシア軍は、和平の贈り物ととして兵士を閉じ込めた巨大な木馬を作り、トロイアの城門を開けさせることに成功。

そしてトロイアの王宮を焼き討ちにして勝利します。

パリスは、権力でも武力でもなく、美・愛欲を選んだ。

もし他を選んでいたら?

しかしパリスはトロイを滅ぼすことになるという予言があったということだから、どれを選んでも破滅の道につながっていたのかも。

神話の世界では、戦いの勝敗や人間の生死は神の手のひらの上でくりひろげられるようなものなのです。

もし自分がパリスだったら、どの女神を選びますか?



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