大阪中之島美術館で開催が始まった「テート美術館展光」に行ってきました。
”光”をテーマにさまざまな表現を、約200年間のアートヒストリーの中から選んだという展示会でした。
それぞれの作品を楽しむだけでなく、その関連を考えると後から後から余韻を楽しむことができて良い展覧会だったな。
本当に良い作品がたくさんありましたが、この絵に私は虜になりました!
ウィリアム・ホルマン・ハント
「無垢なる幼児たちの勝利」
1883-84
ラファエル前派の画家たちの絵が大好きで、結構色々な絵を見てきたつもりだったけど、これは初めて目にした絵。
何回も後戻りして見てしまいました!!
中央に描かれているのは、宗教画でもお馴染みの場面。
エジプトに逃げる、幼いキリストを連れた聖母マリアと聖ヨセフ一家の姿。
聖家族のまわりにいるたくさんの子供たちの姿、彼らが本当に愛らしかった。
あどけない表情、むちむちの腕や足。
ちょっと大きな子から、まだ生まれたばかりの赤ちゃんのような子まで。
そんな彼らは光をまとったように描かれていて、キリストを守るように周りを取り囲んでいます。
ハントによると、この子たちはキリスト誕生を恐れたヘロデ王によって殺されてしまった罪なき子供たちなのだそうです。
キリストのちょうど前あたりにいる子が、自分の胸あたりを「なんだろう?」という表情で見ているのが美術館で気になっていました。
その理由が今このブログを書いていてわかりました・・・
この子は自分の服が破れているのに気がついたのですね。
そして珊瑚のネックレスが壊れていることに。
自分の残酷な運命がわかっていないような本当に無垢な表情が、さらに悲しさを表してます。
書きながら泣けてきました・・・
ハントは絵の中に”空気の泡”を描いています。
大きなものがキリストを乗せたロバと聖ヨセフの間を漂ってます。
そして小さな泡は子供たちの周りにも。
テート美術館のホームページによると、「永遠の生命の流れ」を表現したかったと書かれているので、泡は命や魂であり、そして生命や魂の瞬間や変遷を象徴しているのかもしれません。
大きな泡から小さな泡は、命の長さや段階、あるいは魂の成熟度なのかも。
ハントは1854年に宗教画への取り組みを深めるために2年間をかけてエジプトとパレスチナに旅をします。
その後も1870年にも訪れて、その時にこの絵を描き始めたそうです。
今世界のあちこちで罪のないたくさんの子どもたちが犠牲になっている悲しい現実があります。
私にできることは何があるのだろう。
こうやってさまざまな文化、歴史、視点や言葉を学び続けていくことだと思っています。
ハントの絵は描き方は写実すぎて、しかも宗教画ということで新しさとかは感じられないのですが、伝統的な宗教画とは全然違う。
展覧会の中には伝統的な絵画からテクノロジーを使った作品までたくさん出てました。
ハントの絵もテクノロジーこそ使ってないけれど、とても斬新な宗教画だと感じました
背後にある深い意味や象徴、そして緻密な考え方によって、強い印象を与える。
私がなぜハントの絵にここまで魅力を感じるのかよくわかった1日でした。