先日ちょっと面白いアート鑑賞を体験しました。(こちらは2021年12月に公開した記事です)
イギリスのLIMINA COLLECTIVEが主催する、マインドフルネスを実践しながらアート鑑賞をするというワークショップに参加したのです。
Zoomで参加するオンラインワークショップ。
瞑想をしたり、ガイドの語りかけを聞きながらアートをじっくり見る。今ここに意識を集中することを練習するというアート鑑賞とマインドフルネスの掛け合わせ!
アート鑑賞とマインドフルネスって相性が良いなぁと以前より感じていました。
作品を集中して見たり、引き込まれるような体感は瞑想に近いと思ったからです。
ロンドン・ナショナルギャラリーがYoutubeで出している動画「5-minute meditation」や、マインドフルネスを26枚の絵画で説明した本「はじめてのマインドフルネス」(紀伊国屋書店)もそんなマインドフルネスとアート鑑賞の素晴らしい組み合わせを提供しています。
ということで、このワークショップのことを知って即申し込み、参加しました。
マインドフルネス・アート鑑賞を体験
鑑賞したのはこちらの作品。
グスタフ・クリムトの「接吻」です。
ワークショップは22時から(イギリス時間の13時から)の30分間。
まず初めにワークショップの簡単な説明の後、数分間の短い瞑想を行いました。
その後10分くらいガイドの方の語りかけを聞きながら、絵を深く深く鑑賞していきます。
注目して見ていく部分について語りかけるガイドの声は、瞑想の世界に入っていくような穏やかなものでした。
これは美術館で少し緊張しながら見るときや、対話型鑑賞しているときの観察する集中とも違う感覚でした。
鑑賞後はみんなで軽く感想をシェアした後、作品や画家についての紹介もありました。
私たちは本当に常にひっきりなしに”何か”を考えてます。それは自分で考えようとしているのではないのに、何かがぽっと浮かんでくる。
そこから思考の旅が始まってしまうのですが、マインドフルネスはそんな声をちょっと横に置いておいて、静かに自分の心に意識を向ける贅沢な時間です。アート鑑賞をしながらもそれが可能なのだなと不思議な感覚です。
私にとってアート鑑賞はとにかくひたすら考える思考の時間に近いからです。
今回の心を整える他にもう一つの大きな成果は、クリムトの「接吻」はこれまで何度も見ているはずなのに、新たに気がついたことがたくさんあったことです。
男女を結びつけているような金の背景が、まるでキリストや聖人の背後に輝く光輪のように見えたこと。
絵全体は、中世の宗教画のようなのに、男女の顔、手と足が妙にリアルなのです。
それは2人の愛し合う姿を生々しくしていて、ちょっとドキドキしてしまいました。
女性の頬の赤みも、男性が口づけしている頬の方が強い。
そして彼女の左手が男性の手を引き寄せているところなんて・・・
女性の足もぎゅっと力がこもっているところなんて恍惚感が溢れている。身体も見えないのにしっかりと丸みも表現している。
クリムトって凄いです。この人の男女の愛の描き方は際どいけれど美しいんです。
当時批判があったのもわかるような気がします。性愛を美術に持ち込みたくない人はいるでしょうから。
アートとその他の境界線はどこなのか、そんなものに正解はないし、人それぞれの感覚があって良いものなのでは。
とまた思考しておりますが・・・
このように絵と深く繋がる鑑賞はとても良いと思いました。
LIMINA COLLECTIVEは、コロナ前はイギリスの数多くの美術館でもワークショップを行なっているようでした。
今はオンラインに切り替わっていますが、美術館で体験できるならもっと絵の世界に入っていけるはず。
ぜひ参加してみたいと思いました。
私が参加したワークショップは、【Pause Look Relax】という30分間のもので、参加費は5ポンドでした。
下記のホームページからEventsへと進むとイベント情報を見ることができます。
▼LIMINA COLLECTIVEのサイトはこちらから見ることができます。