365日絵のなかで”旅”をする 旅するアート鑑賞

サンタ・マリア・デッラ・サルーテ大聖堂/ヴェネツィア【365日絵のなかで”旅”をする】

2024-01-28

ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナーはイギリスを代表する風景画家。ロンドンで生涯の大部分を過ごしているけれど、イタリアには1819年、1833年、1840年と3回旅をしています。

画家にとってやはりイタリアは行ってみないといけない場所なのです。

旅行をして戸外でスケッチすることが習慣だったので、イタリア滞在中も道具を持ってあちこちと動きながらスケッチをしているターナーを想像してしまいます。


絵を見てみると、目の前にはヴェネッツィアらしいたくさんの船が浮かぶ、カナル・グランデと言われる大運河が広がっています。そして右手に見える白く美しい建物はサンタ・マリア・デッラ・サルーテ大聖堂(Basilica di Santa Maria della Salute)。白いイストリア石の外観は、光が反射して、運河や青い空に映える姿は本当に美しくてヴェネッツィアの見どころの一つです。

名前には、この教会が建てられた意味がしっかりと刻み込まれています。

Basilica di Santa Maria della Salute

  • Basilica (バシリカ): 元々はローマ時代の公共建築物の形式を指していましたが、キリスト教の文脈では、特に重要な教会や礼拝堂を指すために使われる称号です。一般に、大きな、格式高い教会を意味します。
  • di (ディ): イタリア語で「の」という意味。
  • Santa (サンタ): 「聖なる」や「聖」という意味の形容詞で、女性名詞に対して使われます。「Saint」の女性形。
  • Maria (マリア): マリアとは、キリスト教におけるイエス・キリストの母の名前です。英語の「Mary」に相当します。
  • della (デッラ): 「di」(の)と「la」(定冠詞「the」の女性単数形)が結合した形で、「~の」という意味を持ちます。
  • Salute (サルーテ): 「救済」や「安全」を意味します。

ちょっとイタリア語講座のようになってしまいましたが、”救済の聖母”という、ヴェネツィアを疫病から救った聖母マリアに捧げられているという意味が込められているのです。

1630年から1631年にかけてヴェネツィアを襲ったペスト(黒死病)は、ヴェネツィアの人口の約4分の1を死に至らしめる大惨事でした。当時、ヴェネツィアのドージェ(最高の公職)ニコロ・コンタリーニはこの疫病からの救済を聖母マリアに祈願しました。聖母マリアがヴェネツィアを疫病から救ってくれたなら、彼女に捧げる教会を建設するという誓約をしました。

ペストが終息した後、この誓約を果たすために、バルダッサーレ・ロンゲーナという建築家が設計したこの壮大な教会の建設が始まりました。教会は1681年に完成し、その設計はヴェネツィアのバロック建築の最高傑作の一つとされています。

毎年11月21日には「サルーテの祭り」が開催され、ヴェネツィアの人々はこの教会を訪れて聖母マリアへの感謝を表します。

Venice, from the Porch of Madonna della Salute, image courtesy of The Metropolitan Museum of Art


タイトル:ヴェネツィア、サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂の前廊から望む 
     (Venice, from the Porch of Madonna della Salute)
画家: ジョセフ・マロード・ウィリアム・ターナー(Joseph Mallord William Turner(1775-1851)
制作年:1835年ごろ
所蔵館:メトロポリタン美術館、ニューヨーク


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