365日絵のなかで”旅”をする 旅するアート鑑賞

ホッベマの遺したミッデルハルニスの並木道【365日絵のなかで"旅"をする】

2024-01-27

ミッデルハルニス(Middelharnis)は、オランダ西部のグーレーオーフェルフラッキー島にある町。

ホッベマはそのミッデルハルニスのアルダー(カバノキ科ハンノキ属の広葉樹)の並木道を描いています。並木道の絵というとこの絵がすぐに頭に思い浮かぶくらい、のどかな田舎道の風景をこんなにも印象的にしているのはなんなのだろうう。

やっぱりまずは、絵の前に立つと自分も前にずっと続く道を歩いているような気分にさせる、遠近法。絵に奥行きと立体感をもたらす技術の”一点消失遠近法”です。

これを使うと、平面の紙の上でも物が遠くにあるように見えるように描くことができます。どうやっているのかというと、まっすぐな道の両側の線は遠くに行くほど近づいていき、最終的には一つの点で交わります。実際には道はまっすぐに伸びていますが、紙の上では遠くに行くほど狭く見えるため、奥行きが感じられるのです。全ての線が一つの点に向かっていくように描き、この点を「消失点」と言うために”一点消失遠近法”と言われています。

視線は、並木道とそれに接する水を湛えた堤防で、絵の中心へと誘導される。細く伸びた木が力強く空に向かって伸びているので、目が自然と広大な空へと導いてくれる

そして丁寧に構成された色々なものがもっと風景の中に引き込んでいきます。それらは当時のオランダの生活を知る手がかり。スペインからの独立後、土地の開墾、商業、誠実な労働に重点を置いたオランダ共和国。特に17世紀前半のオランダは、海外との貿易の展開と共に、国内での干拓や運河の整備や園芸農業が盛んに。風車のあるオランダの風景はこの頃に出来上がったのだとか。ガラス工芸、毛織物、造船、醸造、印刷も盛んでした。

右手遠くに見えるのは船のマスト。
左手には尖塔のある教会が見えている。

detail of The Avenue at Middelharnis

果樹園に水を運ぶ溝。
ナイフで剪定している男性も。

detail of The Avenue at Middelharnis



荷車の通った跡が見える道。
犬を連れて銃を持って歩いてくる男性。左手の雑木林は狩猟所となっているのでそちらに向かっているのかも。

detail of The Avenue at Middelharnis

ホッベマの人生は当時のオランダのように華やかなものとは違ったようで、大工の息子として1638年生まれて、15歳の時に弟や妹と一緒に孤児院に預けられている。そのあとオランダの風景画家ヤーコプ・ファン・ロイスダールに弟子入り。

結婚と同じ頃輸入ワインの計量を行うワイン醸造技師になっている。そうして画家の仕事は減っていく。

代表作のこの絵は、画家活動をストップして20年後に描いた作品。その数年後に妻の2人の子供が亡くなり、最終的にホッベマは貧民の墓に埋葬されるようになった。なんだか寂しい最後です。

The Avenue at Middelharnis, image courtesy of National Gallery, London

ミッデルハルニスの並木道 (The avenue Middelharnis)
画家: メインデルト・ホッベマ(Meindert Hobbema(1638-1709))
制作年:1689年
所蔵館:ナショナル・ギャラリー、ロンドン



現在ミッデルハルニスは家や建物が建ち並んで、風景は様変わりしています。並木道があった場所も住宅街の道路のようになっていて面影などなさそう。でもGoogle Mapで見るとホッベマ通りという名前のある道が見つかったり、素敵なゲストハウスもあって、いつか行ってみたいと思う場所の一つです。



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