ロレーヌのストリートミュージシャン【365日絵のなかで”旅”をする】

手前にいる2人の男性が向き合って何か揉めているように見えます。

右の男性は穴の空いた笛のようなものをぎゅっと高く持っていて、左の男性が前に出てこないように制止しています。反対に制止されている男性は右手にナイフを持っている。危ない。

何が理由に威嚇しあっているのか?とっても気になるのは右の男性の右手です。笛よりも高く上げられた手には何か挟んでいるように見える。
ちょうど手は左の男性の目の高さにあってどうやら攻撃している感じが男性の顔からも伺えます・・・何しているの??

手に握られているものはなんとレモン🍋。そう、ぎゅっと手で絞ったレモン汁を目にかけているのです!!

もう少し彼らの持ち物をじっくりと見てみると、ナイフを手にした男性は肩から何か大きなものを下げています。レモンを絞っている男性も、腰のところに別の笛が見えている。争う2人をニヤニヤして見ている男性たちの手にも楽器が。彼らはストリートミュージシャンなのです。

彼らは演奏する場所を争って喧嘩をしていて、盲目を装っているのでは?という疑いをはらすためにレモン汁を目に入れてどう反応するのか確かめているのだとか。そんな確かめ方があるなんてびっくりですが、貧しいストリートミュージシャンにとって、生活のため場所取りは死活問題なのかも。

日本にも琵琶法師という、盲人の僧が琵琶を弾きながらお経や物語を語るという職業がありました。

ラ・トゥールが生まれたロレーヌ公国は、現在のフランス北東部にかつて存在した国家。このころ、ペストの流行や、フランスと神聖ローマ帝国間の戦いなどによって悲惨な状況に巻き込まれてました。ストリートミュージシャンはどんな演奏をしていたのだろう。

タイトル:The Musicians' Brawl(辻音楽家たちの喧嘩)
画家: Georges de La Tour (1593 - 1652)(ジョルジュ・ド・ラ・トゥール)
制作年:1625-1630年ごろ
所蔵館:J・ポール・ゲッティ美術館


疑われている男性が持っている楽器はHurdy-Gurdy(ハーディガーディ)という手回しオルガンのような楽器を持っています。ジョルジュ・ド・ラ・トゥールは他にもこの楽器を持っているストリートミュージシャンの姿を描いています。かなり大きな楽器ですよね。姿や格好も似ていてい同じ男性を描いているのかな。

ラ・トゥールは絵の真ん中に菱形のようなスペースを作ってます。そこにはオルガンを回るレバーのような楽器のパーツが。菱形を作り上げているものを見るとこのちょっと緊迫した状況が段々と見えてくる・・・構成がうまいなぁ。


(参考)
https://www.getty.edu/art/collection/object/103RCX
https://www.museodelprado.es/en/the-collection/art-work/a-blind-hurdy-gurdy-player

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このブログ記事「365日絵のなかを”旅”する」を元にした音声配信もスタートしました。
放送時間は、毎週月曜日の22時。
のんびりとしたトークと絵の中の世界をリラックスした雰囲気で楽しんでいただけると嬉しいです。

絵に描かれた場所に行ってみたい!
描かれている人たちが何をしているのか気になる!
どんな服を着ているの?どんな会話をしているの?

そのようなことに想像を膨らましながら、トークをしています。
絵の詳しい解説というものではなく、絵から少し離れた雑談も含め、絵画の鑑賞の楽しみが伝わると嬉しいです。

今回は絵で登場したレモン🍋の意外な使い道ということで、私たちの好きなレモンの使い方の話もしています。

絵の中を旅する・400年前のフランスのストリートミュージシャンの喧嘩をのぞきに行 - アートと歴史・YOKO | stand.fm
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