アート鑑賞で自分の価値観や物の見方を知るために、対話を使ったアート鑑賞を取り入れています。
そして人にも積極的におすすめしています。
なぜかというと対話を通して、その人の今の気持ちが言葉になって溢れ出すからです。
「対話型アート鑑賞」とは?
「対話型アート鑑賞」は、作品を、感想、気づきや疑問など2人や少人数のグループで話し合いながら見ていくものです。
鑑賞と聞くと、専門家の解説を聞きながら見るイメージを持たれるかもしれませんが、この鑑賞スタイルはコミニケーションをとりながら作品を深めていく参加型の方法なんです。
最近では美術館などアートの現場だけでなく、学校や企業の人材育成にも活用されるなど注目されています。
それは、絵画などの作品の情報(誰が作った?とかどんなことが描かれている?など)の知識でみるだけではなく、芸術は広く教育や人間形成に役立つとニューヨーク近代美術館(MoMA)が教育プログラムとして開発された鑑賞法だからなのです。
具体的にどのようなことをするのかというと、絵画や彫刻などのアート作品をグループでじっくりと見たあと、鑑賞者それぞれが感想や気付いたことを出し合っていきます。
ファシリテーター役の人が、グループの会話を引き出すためにこのような質問をなげかけます。
第一印象は?
何が見えますか?
どう感じますか?
どこからそう感じましたか?
ここで大切なのが「作品を正しく理解しなくては・・・」ということを手放して、自由に発想したり発言すること。
それぞれが作品と真剣に向き合って、想像したり、感じたことを語り合う中で、気がつかないうちに「自分」というものが出てきてしまいます。
「作品の感想を話してるのに、自分のことを語っていることに気がつき面白い」という参加者の方の感想もこれまでたくさん聞いてきました。
ポイント1:大切なのは、自分が見たこと・感じたことを素直に語ること
たとえば、こちらの絵で対話鑑賞をしたときに出てきた感想を一部ご紹介します。
”色から物憂げな感じがする”
”男性のマント姿がみすぼらしい”
”男女の間に距離がある”
”柔らかい雰囲気なのと木枠の丸みで全体的に柔らかいけど、聖堂の直線とががちょっと不調和な印象を受ける””
”2人が塔を見ているようで見てない”
”男性の背中や、女性のうなじ腕の丸みから熟年夫婦のオーラを感じる”
”女性の様子は見つめる先へ今すぐ出かけようという様子ではない”
”男性の足が一歩前に出ていて視線の先に積極的な関心があるように感じました”
結構何でもありだなぁ・・・と感じられたのではないですか?
色々な見方がありますよね。
ポイント2:「会話」ではなく「対話」
もう一つ大切なのは、ここでは「会話」ではなく「対話」であること。
聴きっぱなしや言いっぱなしではないのです。
聞き合う、伝え合うという感じでしょうか。
話していることの意味や背景を聞くことで、その人の着眼点や気持ちを知ることができるのです。
具体的に言うと、先ほどの感想について、
どの部分からそう思ったのか?
さらにどう感じますか?の質問をしていくのです。
”女性の様子は見つめる先へ今すぐ出かけようという様子ではない”に対して、上記の質問などを繰り返しているうちに、発言者の悩みや思考にたどりつきました。
”理想に向かうか?諦めるのか?”と悩んでいると。
その他にも、”責任がありそうなことから逃げている”、とか”頼るのがいや” などと言う人もいました。
今の自分の気持ちに気がついてしまうのは?
これが、”たかがアート鑑賞”ではなく、”今の自分の気持ちに気がついてしまうアート鑑賞”でもあります。
私たちが世界を認識するのと同じように、アートでも自分の見方で切り取って見ているからなのです。
そして、自分と人の間にある”アート”について語っているので、自分のことをわかってもらおう!気持ちを伝えよう!と意気込むことなく話せるので気がつかないうちに本音が出てしまったりします。
どう感じられましたか?
これは自分自身に問いかけながらもできるので、ぜひいろいろな作品を見て試してみてください。