Yoko

英国大学で西洋美術史専攻
日本の大学で文化支援専攻
海外.国内旅で多くのアートに触れる
2019年から対話鑑賞会・講座主宰しています。

美術史の知識だけでなく、対話型鑑賞で自分はどう感じるのか?を大切にするアート鑑賞を提案しています。

クリムトの悩みを勝手に想像して香りを調合してみました・・・

画家の悩みに効く香り」を配信しました!2回目に取り上げた画家は、19世紀末のウィーンで活躍した画家グスタフ・クリムトです。 グスタフ・クリムト (Gustav Klimt、1862年7月14日-1918年2月6日)ウィーンの画家 私にとってクリムトはとってもミステリアスな存在です。 官能的・幻想的・華やかな作品のイメージと、家族を支え・芸術家仲間を束ね・社会的に弱い立場の女性モデルの味方となる親分肌の彼のイメージ。多くの女性との関係などが必ず付いて回るけど、そこに溺れるのではなく、自分の作品は女性の美しさ ...

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ウィリアム・バレル:バレルコレクションの創設者

スコットランドのグラスゴーの海運王、ウィリアム・バレルは、若くして家業の海運業に参加して、船舶の取引で成功を収めました。15歳の時にはすでに初めて美術品を購入していたといいます。 その後、バレルは画商のアレクサンダー・リードから1890年から1920年代にかけて、スコットランドの画家の作品やフランス絵画、美術工芸品を購入し続けました。彼のコレクションは9000点以上にも及び、その中には19世紀末のグラスゴーがフランス絵画のマーケットとして脚光を浴びるようになった時代の作品も含まれています。 アレクサンダー ...

ベルト・モリゾが描く姉エドマとパリのテラス『植木に水をやる若い女性』【365日絵のなかで旅をする】

今回の旅は19世紀のパリ。印象派の女性画家の1人、ベルト・モリゾのパリの自宅テラスが舞台です。 案内してくれるのは、ベルトの姉で画家でもあったエドマ・モリゾ(1839-1921)。 2人は一緒に画家を目指して励ましあっていた期間が長かったのですが、エドマが結婚を選び画家をやめた時に親密な関係は終わったようです。でもモリゾの絵の中にはたびたびエドマが登場しています。 今日の絵もその一枚。エドマが結婚して7年後に描かれている絵です。 絵のなかを旅する案内人は、ベルト・モリゾの姉エドマ 今日は私の妹、ベルト・モ ...

カナレットの「サンマルコ広場」【365日絵のなかで旅をする】

今回の旅は、18世紀のイタリア、ヴェネツィアのサンマルコ広場をめぐる旅。絵はヴェネツィア生まれで、この街を知り尽くした画家カナレットが描いたサンマルコ広場を描いたものです。 案内してくれるのは、カナレットをイギリスに売り込んだ代理人のジョセフ・スミス(1682-1770)。 実在のヴェネッツィアに住んでいたイギリス人で、銀行家、商人として成功。芸術家のパトロンでもあったのですが、カナレットに出会い20年にわたる関係の中たくさんの絵をイギリスへ売り込んだ人物です。 今日の案内人は、カナレットの代理人のジョセ ...

クロード・モネの悩みを勝手に想像して香りを調合してみました・・(ポッドキャスト)

ポッドキャストの新しいコーナー。「画家の悩みに効く香り」を配信しました!1回目の画家は、印象派の画家といえばこの人、クロード・モネです。 クロード・モネ (Claude Monet, 1840年11月14日-1926年12月5日)印象派フランスの画家 モネって印象派の画家として世界中で愛されて、彼の絵がない美術館がないのでは?と思うほどの画家です。私も大好きな画家の1人ですが、愚痴や泣き言が多い手紙を読んで、理想と現実のはざまで辛かったんだろうなぁ、悩んで苦しんでいたんだなぁと思ったのです。 調香のプロの ...

印象派仲間のピサロ、モネ、シスレーの水辺の絵を並べて見る贅沢

先日久しぶりに名古屋市にあるヤマザキマザック美術館へ!! 日本の好きな美術館の10位の中に入る一つ。 好きな理由は、ロココから20世紀の絵画の歴史が辿れるような作品が揃っていること。 そして展示室の空間の美しさ。まるでヨーロッパの美術館にいるような気分にさせてくれる壁紙、床の素材や美しいシャンデリアなど。 空いているので静かにゆっくりと見れるのもなかなかいい。そして絵画のフロアの下にはインテリアやガラスなど工芸品のコレクションが充実していることも。 カフェやレストランが揃っていて鑑賞後の時間も優雅に過ごせ ...

『ソロモンの審判』ニコラ・プッサン【365日絵のなかで旅をする】

今回の旅は「見事な裁き、ソロモンの審判を見にいく旅」 古代イスラエルの王、ソロモンはダヴィデ王の息子で、人々を守るため巨人ゴリアテを倒した勇者の子としても知られています。でもソロモンの真の偉大さは、彼の無比の知恵と公正さにありました。 見る絵画と言えばこの人ニコラ・プッサンが描いた「ソロモンの審判」を通じて、古代の裁きとその智慧を探りにいく旅です。 古代の裁き、ソロモンの智慧 The judgment of Solomon by Nicolas Poussin: image wikimedia commo ...

【絵を見る楽しさを教えてくれる本】安野光雄の旅の絵本II イタリア編

記事にプロモーションが含まれています 先日とっても素敵なプレゼントをもらいました。 安野光雄さんの『旅の絵本II』です。 この絵本は10冊のシリーズの世界の国を1冊にした絵本で、私がもらったのはイタリア。イタリアは私にとって美術の世界へと導いてくれた国。そのことを知って友人はイタリアをプレゼントしてくれました。 表紙にはどこの国か書いてないのですが、よく見て!畑が緑・白・赤の国旗になっています。 本の中に字はありません。絵をじっくりと楽しむ絵本なのです。 馬に乗った1人の旅人が、イタリア、トスカーナの緑の ...

イザベラ、またはバジルのの壺の世界を巡る旅ージョン・エヴァレット・ミレイ【365日絵のなかで旅をする】

今回の旅は、イザベラ、またはバジルの壺の物語の世界を旅します。絵に描かれた物語の世界の旅は、私の大好きな旅。ミレイの絵はその楽しみを存分に伝えてくれます。 今回は残酷な恋物語ですが、美しい絵の中に暗示をたくさん配置しながら、複雑なストーリーを1枚の絵で伝えてくれています。 美しい壁紙の室内で食事を楽しむ人々。部屋からは青空の庭園が広がって庭園の景色も見える豊かなひととき……に見えますが、本当にそう? 白いタイツの男性の表情をよく見てください!睨みつけるような顔でテーブルの右側に座る男女を見て、足で犬を蹴ろ ...

サージェントの肖像画と衣装の切っても切れない関係を見に行きたい!

私が肖像画を目の前にしたとき、まずざっと見るところは表情、ポーズ、そして衣装です。衣装は、時代や階級が何となく理解できるというのも大きいけれど、豪華さや繊細さに目を惹きつけられるというのが一番の理由かも。 上に重ねた服から下の生地の柄が透けていてうっとりしたり、こんなすごい靴履いてたの?!と吹き出しそうになったり、豪華なジュエリーに誰からもらったんだろうと想像したり、衣装だけ見るだけでも十分に楽しめます。 肖像画家として大成功したアメリカ人画家のジョン・シンガー・サージェント。彼の絵は衣装が本当に本当に素 ...

ネットラジオ「365日絵のなかで旅をする」をスタート

standfmという音声配信アプリ内でラジオ番組を始めました。 実際には昨年からスタートしていたのですが、一時中断していたので今月から再スタートとなります。ブログにもシリーズで書き始めた「365日絵のなかで旅をする」の記事を元にして、そこから2人で絵の中に入り込むように旅をするトーク番組です。 お相手をしてくれているのは、海外を旅したい理学療法士でもあるmikiさん https://www.instagram.com/miki.katou.oz/放送時間は、毎週月曜日の22時。のんびりとしたトークと絵の中 ...

「レイフ・エリクソン、アメリカを発見する」”幸運なレイフ”の新大陸発見の旅【365日絵のなかで”旅”をする】

今回の旅は1000年以上前の、新大陸発見瞬間への時間旅行。 絵の中では今まさに、レイフ・エイリークソン一が、北アメリカの東海岸の大陸を目にして、指を指して同行者たちに知らせている瞬間の場面です。左の方に確かに陸地のようなものが見えています。船は荒波の上で激しく揺れていて、空もどんよりしていますが、目指す場所は明るく輝いて見えている。 船から乗り出して見ている少年の足元には侵入した水も激しく動いている様子が。その背後には陸地を見ようと駆け上がる男性の姿も。船の中の興奮と荒波が発見瞬間をドラマチックに演出して ...

ウィリアム・ビーチーの「シャトルコックで遊ぶケネス・ディクソンの肖像」【365日絵のなかで旅をする】

今回の旅は肖像画の中の人々と出会う旅。肖像画に描かれた少年とバドミントンの歴史を見にいきます。 絵の中の少年、こんなに素敵な衣装をつけてバドミントンをして遊んでます。しかも真っ赤なラケットに、羽の先端も同じ色。なんだか目が離せなくなりこの絵を選んでしまいました。 ということで、今回はバドミントンの歴史を旅します! 絵のタイトルについている「shuttlecock」。これはバドミントンで使用される羽根つきの球(羽球)を指します。shuttlecockは、通常、羽根と軽い重り(たいていはコルク)でできています ...

ブリュージュの寄進者ーハンス・メムリンクの描くポルティナーリ夫妻の肖像【365日絵のなかで旅をする】

今回は、夫婦の肖像画から、550年前のブリュージュの裕福な銀行家、そして寄進者の世界を旅したいと思います。 ▼前回の「キリストの受難」の絵の下には、寄進者の肖像が描かれていたことを少しご紹介しました。 https://cosinessandadventure.com/hope-and-healing/ 描かれている人物、トンマーゾ・ディ・フォルコ・ポルティナーリ(1428-1501)は、フィレンツェの名だたる家系出身。彼はブルージュのメディチ銀行の支店長になるためにブルージュへ移住しました。一緒に描かれて ...

ハンス・メムリンクの描く「キリストの受難」-希望と赦しの旅【365日絵のなかで旅をする】

キリストの受難のストーリーを一枚の絵画で見せている絵があります。15世紀にフランドルで活躍した画家ハンス・メムリンクの描いた「キリスト受難」です。ずいぶんと大きな絵なのでは?と思われますが、縦56.7x横92.2cmという想像するより小さいサイズ。その中にびっしりと描かれているのは、キリストがエルサレムに入場するところから始まり、復活までの物語。 この絵を希望と赦しの旅としたのは、メムリンクの絵はある特定のエピソードに焦点を当てているのではなく、全体でキリストの復活の意味や重要性を気づかせてくれたからです ...