ウィリアム・ビーチーの「シャトルコックで遊ぶケネス・ディクソンの肖像」【365日絵のなかで旅をする】

今回の旅は肖像画の中の人々と出会う旅。肖像画に描かれた少年とバドミントンの歴史を見にいきます。

絵の中の少年、こんなに素敵な衣装をつけてバドミントンをして遊んでます。
しかも真っ赤なラケットに、羽の先端も同じ色。
なんだか目が離せなくなりこの絵を選んでしまいました。

ということで、今回はバドミントンの歴史を旅します!

絵のタイトルについている「shuttlecock」。これはバドミントンで使用される羽根つきの球(羽球)を指します。shuttlecockは、通常、羽根と軽い重り(たいていはコルク)でできています。

シャトルコックの起源は数世紀前にさかのぼり、中国、ギリシャ、インドの古代文明にまで遡ります。初期の頃、シャトルコックはコルクや木製のベースにアヒルやガチョウの羽を取り付けることで作られていました。中国では「蹴鞠」として知られる蹴るゲームとして、紀元前5世紀からプレイされていました。このゲームはアジア全土に広がり、8世紀の奈良時代には日本で「羽根突き」として知られるようになりました。

16世紀後半にヨーロッパで「羽根とバトミントンラケット」として知られるようになりましたが、フランスでは「Jeu de Volant」(飛ぶゲーム)と呼ばれ、小さな手のパドルを使ってプレイされていました。このゲームは社交ゲームとして、ネットで分けられることなく、プレイヤー同士でシャトルコックを行き来させることによってプレイされていたようです。

今私たちが知っているバドミントンは、英領インドで形が作られました。1863年帰国したイギリス軍の将校が”バドミントン・ハウス”で、新しいバージョンを紹介したことが名前の由来となっています。最終的に1893年のイングランド・バドミントン協会が設立され、人気になるにつれてシャトルコックはさらなる改良を遂げました。

現在もボーフォート公爵と公爵夫人の邸宅であるバドミントン・ハウスのエントランスホールのサイズは、コートの寸法と同じなんだそうです!!


では、絵に描かれているものもちょっと見てみましょう。

おもちゃの銃、ポニーの鞭のように見えるもの、そして羽根とバトミントンラケットに囲まれています。すべて赤いですね。何か意味があるのだろうか・・・

これらは、18世紀末の裕福で健康な若い子供が、屋外で遊ぶことを楽しむ活発な子であることを表しているのだとか。

しかし少年は、マリー・アントワネットによって人気がヨーロッパ中に広がったフランスファッションを着せられています。大きな羽の帽子にカーリーへア、フリルの襟に背中のリボン、服も靴もタイトそうで野外で活発に遊ぶのには苦しそうに見えるけど。

この頃は、教育観や社会における子供たちの位置付けが変化した時期でした。伝統的に、特に高貴な家庭の子供たちは、家族の地位や権力を象徴する形で描かれました。でも、遊んだり、学んだり、自然の中で過ごしている普段通りの様子が描かれるように変化していきます。

タイトル:シャトルコックで遊ぶケネス・ディクソンの肖像(Portrait of Kennett Dixon playing shuttlecock)
画家:ウィリアム・ビーチー(William Beechey(1753-1839)
制作年:1788-1792年
所蔵美術館:デンマーク国立美術館


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このブログ記事「365日絵のなかを”旅”する」を元にした音声配信もスタートしました。
放送時間は、毎週月曜日の22時。
のんびりとしたトークと絵の中の世界をリラックスした雰囲気で楽しんでいただけると嬉しいです。

絵に描かれた場所に行ってみたい!
描かれている人たちが何をしているのか気になる!
どんな服を着ているの?どんな会話をしているの?

そのようなことに想像を膨らましながら、トークをしています。
絵の詳しい解説というものではなく、絵から少し離れた雑談も含め、絵画の鑑賞の楽しみが伝わると嬉しいです。

絵のなかで旅をする・おしゃれなイギリスの男の子がバドミントンをしているのを・・ - アートと歴史・YOKO | stand.fm
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