夜時間はアートに浸る! 読書の秋におすすめしたい3冊

夜をゆったりと過ごす時間に、アートの世界に浸ってみませんか?

読書の秋におすすめしたい美術関連の本を3冊ご紹介します。

1冊目は、一人の画家の作品の世界を体験できるような小説

2冊目は、フランスの絵画の400年の歴史をまるで大河ドラマのように楽しめる本

3冊目は、現代アートの世界をイラストをふんだんに使って紹介したガイドブック

ジャンルもさまざまですが、本を読んだあと美術館に行くとまたさらに楽しめることまちがいなしです。

チューリップ熱 デボラ・モガー著

「チューリップ熱」
デボラ・モガー著 立石光子訳
白水社

2018年の10月からフェルメールに再び注目が集まる!と言って良いのでしょうか。
東京でフェルメール展開催が始まりました。
それに合わせて、映画でもフェルメールの世界いっぱいの作品「チューリップ・フィーバー」が公開されました。
その映画の原作本がこちらの「チューリップ熱」です。

フェルメールの世界を小説にしたいと思ったイギリスを代表する女性作家の一人、デボラ・モガーが書き上げたベストセラー小説です。

舞台はスペインから独立し、チューリップ・バブルと呼ばれる好景気に人々が浮かれていた17世紀オランダのアムステルダム。
オランダは日本の九州と同じくらいの面積で、最盛期の人口も約300万人という小国。
その国が世界の海を制覇する商業国家として経済的に登り詰めます。

チューリップ・バブルとは、チューリップが投機の対象となって珍しい品種の球根一個が家を買えるほどの値段まで跳ね上がったオランダのバブル期のこと。
小説にもその珍しい品種が登場しますし、関わる人の取り憑かれたような状況も描かれています。

そのような中、美しく若い婦人ソフィアが無名な画家と出会うことで物語が進んでいきます。
ソフィアは年の離れたお金持ちの商人コウネリスと結婚し、裕福な暮らしをしています。
オランダではチューリップと共に絵画もブームで、一般市民がパトロンとなって収集して自宅に飾って楽しんでいました。
コウネリスはソフィアとの肖像画を、若く情熱的な画家ヤンに依頼するのです。
恋に落ちた二人の運命は・・・

物語は二人の愛の行方だけでなく、当時のオランダの風景が浮かんでくるように描写されています。
まさにフェルメールの世界。

そしてフェルメールや当時の画家たちの絵画がカラーで16点も挿入されていて、それらの絵が物語とも意味ありげにうまくマッチしています。

▼映画でも見てみたいと思われた方はこちらもどうぞ!


フランス絵画史 高階秀爾著

「フランス絵画史 ルネッサンスから世紀末まで」
高階秀爾著
講談社学術文書

フランス絵画の400年の歴史をまとめた東京大学文学部教授の高階秀爾先生の本。
16世紀から19世紀の400年というのは、フランスの国民性が豊かにあらわれて花開いた期間。

つまり、絵画史だけにかぎってみても、フランスでは、特に傑出した時代というものを定めにくい。少なくとも、フォンテーヌブローの宮殿にフランソワ一世の宮廷が艶美華麗な世界を作り上げて以来、二十世紀の今日にいたるまで、連綿として途絶えることのない豊かな創造活動が続けられて来た。山に譬えるなら、抜きんでた高峰がひとつだけ聳えるというよりも、峨々たる連峰が連なる壮大なアルプス山脈のようなものがフランスの絵画史だと言ってよい。それなればこそ、美術の国フランス、藝術の都パリというイメージが、ーそしてイメージのみならずそれに対応する実体がー、近代においていつの間にか出来上がってしまったのである。

16世紀のフォンテーヌブロー派
17世紀のプッサンやロラン
18世紀のヴァトー、ブーシェ、フラゴナール
19世紀のダヴィット、アングル、ドラクロワ、バルビゾン派、ミレー、クールベ
19世紀後半の印象派、モンマルトルの画家たち

目次に出てくる画家の名前を見ているだけでもこの400年のすごさが伝わってきます。

詳しい時代背景から、その時代の絵画の特徴、画家の歴史やその評価などにも触れられています。

一つの時代に注目するより歴史の流れを追っていくと、なぜこのような絵画が登場したのか、そして何があってそこから次の様式に変わっていったのかがとてもよくわかります。

すぐわかる!という本ではありませんが、じっくりと味わいながら読み進めたい本です。

めくるめく現代アート 筧菜奈子(文・絵)

「めくるめく現代アート イラストで楽しむ世界の作家とキーワード」
筧菜奈子(文・絵)
フィルムアート社

現代アートをもっと身近に楽しく伝えることができないかと、著者によるイラストもふんだんに使われている現代アートガイド。

1950年代以降の作家40名の代表作品の紹介。また現代アートキーワード38個についてくわしく解説もされています。

作家のイラストとともに添えられている作家自身の言葉がまた深く、作品を理解する手がかりにもなって考えさせられます。

現代アートは高度な知的ゲーム

現代アートはよくわからない・・・と遠ざかっていた時期もありましたが、作家の意図を知ろうとするところがポイントなのだ!とわかってからは、作品を見るのが楽しくなりました。

この本はとにかくイラストが素敵で楽しく読めます。

そして読んでいたら作品が見たくなってきました!

現代アートってちょっとむずかしいなと思っている人にも、もっと知りたいと思っている人にもぜひ読んでみたもらいたいです。

3冊のおすすめアート本をご紹介しました。

新たなアートと出会うきっかけとなれば嬉しいです。





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