49万点のメトロポリタン美術館の作品で美術を学ぶ方法

アメリカにある美術館のホームページでは、49万点以上の美術作品の画像を検索できます。
どこの美術館か知っていますか??

タイトルにもなっているので答えは簡単ですね。
それは、ニューヨークにある「メトロポリタン美術館」です!!

私は、アメリカやヨーロッパの美術館のホームページを普段から活用して作品の検索をしたり、作品の情報を調べたりしています。

所蔵作品の画像が紹介されているだけでなく、とにかく情報が豊富です。

(アジア圏や他の地域の美術館については、ほとんど見たことがないので詳しくはわからないのですが・・とにかく日本の美術館とは比べ物にならない充実ぶりです)

英語が苦手だから・・・と尻込みせず、ぜひ色々と見てみることをおすすめします。

無料で学べるという素晴らしい教材という以外に、こんな良いところもありますよ。

ポイント

・画像を見るのはもちろん、その画像に紐づいたさまざまな情報にもアクセスできる
・公開されている画像の中には、著作権フリー(パブリックドメイン)で、自由にダウンロードして使用することができる
・画像は高画質で提供

そして、学び!勉強!という側面だけでなく、

・今まで知らなかったアーティストや作品に出会えて、自分のアート好きの範囲が広がる。
・こんな作品もあるの!という発見もある。
・日本の美術品が海外に数多く所蔵されていることにびっくりする。

なんて嬉しい発見もたくさんあります。

この記事では、49万点以上の作品を好きだけ探索し、著作権フリーの画像を探す方法をご紹介します。

そして、そこから見つけたアメリカ合衆国の象徴とも呼べるような作品で、画像のダウンロード方法や項目の見方を見ていきます。

オンライン・メトロポリタン美術館で49万点以上の作品を好きだけ探索する方法

まずはメトロポリタン美術館のサイトにいきましょう。


美術館のサイトが開いたら、「ART」→ 「The Met Collection」へと進んでください。

すると、メトロポリタン美術館のコレクションの検索ができるページが開きます。
色々な検索方法がありますが、まず初めに簡単に見どころ作品を紹介してくれる「Highlights」を見てみましょう!

Highlightsは、見どころ・重要な作品とされているものです。
この言葉覚えておくと、他の美術館のサイトに行っても役に立ちます。

Show Only というところで、Highlights と Artworks with Imageにチェックが入っているはずです。

この下はどんどんと作品の画像が登場しますので、気になる画像があればクリックしてみていきましょう。


Search The Collectionの欄には、探したい作品のキーワードを入れて検索することもできます。
画家の名前、タイトル、神話、宗教、猫、肖像画、彫刻など。


その下にある、Filter Byはさらに細かく絞って検索できるようになっています。
こちらは選択肢が出てきますのでクリックして選択します。

Object Type / Material (作品の種類や使用素材)
Geographic Location(場所)
Date / Era (年代、時代)
Department(様式)


注意点

この方法で見ているのは、画像が紹介されているもの全てです。
自由にダウンロードして使うことができる画像はこの中の一部となります。


さて次は、著作権フリーの画像の検索方法です。


メトロポリタン美術館の著作権フリーの画像を探す方法

先ほどの検索画面に戻ります。

ここで、Show Onlyの項目で、Artworks With Image と Open Access にチェックを入れます。
このopen Accessが大切です。


オープンアクセス(open access、OA)は、論文や画像などの情報、をインターネットを通じて誰もが無料で閲覧可能な状態に置くことを言います。

メトロポリタン美術館のサイトではオープンアクセスをこのように説明しています。

What is Open Access?
In February 2017, The Met introduced its Open Access Initiative which makes all images of public-domain artworks and basic data on all accessioned works in its collection available for unrestricted use under Creative Commons Zero (CC0). Now anyone can download, share, and remix images and data about artworks in The Met collection.

The Open Access initiative represents an incredible body of ongoing work by curators, conservators, photographers, librarians, cataloguers, interns, and technologists over the past 151 years of the institution's history—new images and data are added each year. It is also an important statement about The Met's commitment to increasing access to the collection in a digital age.

In the last four years, Open Access images and data have been viewed over 1.2 billion times and downloaded over 7 million times from The Met’s site and on our partner platforms.

メトロポリタン美術館HPより

こちらを要約すると、2017年2月、メトロポリタン美術館はパブリックドメインの美術作品のすべての画像と、コレクション内のすべての作品の基本データを、クリエイティブ・コモンズ・ゼロ(CC0)の下で無制限に使用できるようにしました。
これにより、誰でも作品画像やデータをダウンロード、共有、リミックスできるようになりました。
オープンアクセスの取り組みは、151年にわたる歴史の中で、学芸員、保存修復師、写真家、図書館員、カタログ作成者、インターン、技術者たちが続けてきた素晴らしい仕事の成果であり、毎年新しい画像とデータが追加されています。
過去4年間で、12億回以上閲覧され、700万回以上ダウンロードされました。

では、たくさん出てくるものからもう少し絞って、オープンアクセスの絵画で検索してみます。
Highlights、Artworks with Image、Open Access 、そしてPaintings を指定してみましょう。

検索結果は373点。
その中からこちらの作品を選んでみました。

画像をクリックすると、作品の詳細ページが開きます。

ここでしっかりと著作権フリーの画像であることを確認してみましょう。
画像の下にOA(Open Access ) Public Domainと記載されていますね!

そしてダウンロードは右下にある下向き矢印をクリックし、画像を開き保存します。
簡単ですね。


「デラウェア川を渡るワシントン」を見る

「デラウェア河を渡るワシントン」
エマニュエル・ゴットリーブ・ロイツェ
1851年

作品の背景

この絵は20世紀、世界の中心となる国の誕生を描いた有名な作品です。

アメリカ合衆国は1607年イギリス東インド会社が設立したヴァージニア植民地から始まります。その後移民が続き1732年には北米東岸に13の植民地ができました。

しかし、そんなに簡単に進むはずはなく、イギリスの植民地建設は、フランスとの戦争を繰り返します。
戦費と植民地統括の費用を賄おうと課税を強化しようとすると、本国議会の代表を持っていない植民地の市民は猛反発します。

その出来事がその後の独立戦争へと発展していきます。
民兵を中心とした大陸軍として、植民地側は1776年7月4日に独立宣言を採択。

イギリス軍との戦いは厳しいものでしたが、ニュージャージーの戦いに勝利、フランスの援護も受けて、決定的ともなる1781年ヨークタウンの戦いで勝利します。

1783年のパリ条約で独立が正式に認められアメリカ合衆国が誕生します。

この絵は、大陸軍が勝利した1776年クリスマスの深夜のニュージャージーの戦いが主題となっています。
絶望的な危機にあった大陸軍は、イギリス軍が冬営(出陣している軍勢が冬を越すために作戦行動を一時停止して長期滞陣を行うこと)するのをチャンスと見て、デラウェア河を渡ったのです。
そして、ニュージャージーのトレントン、プリンストンで勝利して、自分たちの首都でもあったフィラデルフィアを守り抜いた。

大陸軍を率いているのが、アメリカの初代大統領ジョージ・ワシントン。

絵は実際には事実とは違う箇所があるのですが、ワシントンを英雄として描く演出として脚色されていると言われています。

画家のロイツェは1849年にこの絵の最初のバージョンを描き始めました。
しかし1850年にアトリエで火災に遭い、その後修復されてブレーメン美術館に収蔵されました。
そして再び1942年のイギリス軍の空襲で焼失してしまう・・・
1850年、ロイツェは再度この絵を描くことになり、1851年10月にニューヨークで展示されたのです。


画像をズームして見てみる

画像をクリックすると、画面が一面作品となり、ズームができるようになります。
左にある➕でズーム、➖でズームアウトして隅々まで絵を見てみましょう。

日本語の表示にしてみる

一部の重要な作品は多言語に対応しています。もちろん日本語もあります。
画像の右上に言語を選べるタブがあります


しかし日本語にすると情報が限られてしまうのはデメリットですね。
作品の解説文も英語のものとは違っています。なぜ?



画像の詳細情報を見てみる

さらに下には作品についての詳細な情報が表示されています。
(日本語ページだと情報が限定されているので英語ページで説明)


タイトル、画家名、制作年、素材、サイズ、作品の提供者、美術館の所蔵noなどが記載されています。


ちなみに所蔵noは全作品に付いているので、検索ページでこの番号を入れると作品にすぐ辿り着きます。

まとめ

メトロポリタン美術館のサイトで美術を学ぶ方法をご紹介しました。

まだまだこのページだけでももっともっと見るところはあるのですが、どんどん長くなるのでこの辺でひとまずストップです。


しかし、49万点って本当にすごいですよね!!

公開されている画像は高画質です。

どんなことに使えるか考えるだけでも楽しいかも。

好きな作品を集めてポスターを作って日々眺めるのも良い。
テーマごとに集めて作品集を作ったり、そこに自分で調べたことを追加していけばさらに良いですよね。
テーマを決めて自分で展覧会を企画してみるのもとっても勉強になります。

さらに私はこんなことも考えたのですがどうでしょうか?
最近、自分の好きなデジタル画像を使って壁紙を作ることができるということを知りました。
ポスターよりも遥にインパクトがあって面白いかも!!



-西洋美術史の学び方