アーティストのためのブログ制作サポートをやめようとしていた。プロフィールからも静かに削除して、もういいかな…と思っていた。
そんな矢先、偶然の再会と想像もしていなかった依頼を受けたんです。
自分のサイトを作ることを考え始めて、そんなとき私のことを思い出してくれたんだそう。
きっかけは昨年のこと。その方に私がなぜアーティストの方のサイト制作サポートをしているのか想いをお伝えしていたんですね。
私は絵や彫刻など作品を見るのが好き!というだけでなく、その作品が誕生するきっかけや制作過程、アーティストの人生など幅広く興味があり、そしてそのどれもが知りたいと思う対象です!!
作品が好きになって、それからその他の情報を知ることもあれば、その他の情報から作品に行き着くこともある。私にとって作品というのは、それ単体ではなく大きな過程の一部。人生や経験、想いと深く結びついた流れの中の一瞬なのだと思っています。
昨年、大阪中之島美術館で、塩田千春さんご本人の解説で作品を見るという超貴重な体験をしました。それまで以上に、彼女の作品を好きだと思うようになったのは、生の声を聞くことができたから。
作品やお写真から勝手に抱いていたイメージと、声のトーンや佇まいがちょっと違っていたんです。そのギャップが、新しい魅力として伝わってきました。さらに、作品が生まれたきっかけとなった、ご自身の辛い体験談を直接聞けたことで、”アーティスト・塩田千春”と彼女の作品が、私の中で一気に立体化したんです。存在の輪郭がくっきりと浮かび上がるような、そんな瞬間でした
どんなところで人はアートに心を掴まれるのか?
それは運命みたいなものでもあるし、ほんの小さなきっかけだったりするのだと思います。私自身のこれまでを振り返っても、そう思うのです
だからこそ、自分の作品を多くの人に見てほしいと願うなら、作品を生み出し発表するだけでなく、自分の言葉で“届ける”機会もたくさんあった方がいい。
だって──どこで誰が、作品に出会ってくれるかわからないのだから。
今回お話しした方から、ある作品が生まれたきっかけを聞かせていただきました。それは、とても個人的で決して軽くは語れないエピソードでした。
私はそのとき、言いたくないこと以外は、もっと書いたり、話したりしてもいいのではとお伝えしました。なぜならそれが、同じような体験をした方や、似たような過去を乗り越えてきた誰かにとって、励ましや癒しのメッセージになるかもしれないと感じたからです。
私は、サイトを作ることでアーティストを有名にしたり、作品を売ったりすることはできません。それは、別の専門家の役割だと思っています。
でも、アーティストの表現や物語が、誰かの心に届くための形を一緒に考えることはできる。鑑賞者として積み重ねてきた視点を活かして、丁寧に言葉を選び、発信の方向性を一緒に考える。安心して、「本当に伝えたいこと」を探していける伴奏者でありたいと思っています。
「この作品は大切だ」と思ってくれる人と、アーティストをつなぐ橋渡し。それが私の役割なのかな。
だから、この人のアートを「見てほしい」「感じてほしい」と心から思えるときに、その表現がきちんと誰かに届くようなお手伝いをしたい。
そんな出会いが、また少しずつ始まっています。