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クリムトの肖像画の数奇な運命 映画【黄金のアデーレ 名画の帰還】

2022-01-10

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グスタフ・クリムトの絵画が大好きな人におすすめしたい映画をご紹介。
タイトルは2015年公開した「黄金のアデーレ 名画の帰還」(原題はWoman in Gold)。
クリムトが描いた、美しい女性肖像画の数奇な運命を描いた実話です。

登場するのは、華やかなウィーンの上流社会の生活、ナチスのユダヤ人迫害の暗黒の日々、現代のアメリカロサンゼルス、絵画を取り戻すため訪れた現在のウィーン。
時代と国を行き来しながら、一枚の絵画を取り巻く人々の物語です。

ドキドキハラハラするサスペンス要素もありながら、奪われた一族の宝である肖像画を取り戻すべく奮闘する主人公たちに感情移入もしてしまう感動的な場面もあります。

そして、クリムトが活躍した当時の時代の空気感も感じられる映画でもあります!!
クリムトの描いた名画に秘められた物語を楽しみましょう。

「 黄金のアデーレ 名画の帰還」あらすじ【ネタバレあり】

映画の主人公は、アメリカ、ロサンゼルスに暮らす82歳のマリア・アルトマン。マリアは、駆け出しの弁護士ランディに協力を願い、オーストリア政府を訴えました。

2人の要求は“オーストリアのモナリザ”と称えられ、オーストリア国立ベルベデーレ美術館に飾られてきたグスタフ・クリムトの名画〈黄金のアデーレ〉を、「私に返してほしい」というものです。

その理由は、黄金のアデーレは、マリアの叔母・アデーレ・ブロッホ・バウアーの肖像画で、第二次世界大戦中ナチスに略奪され、正当な持ち主である自分のもとに返して欲しいという思いからです。

2人の訴えに対してオーストリア政府は、真っ向から反論します。


映画の中では、4つの舞台が行き来します。

・マリアが少女時代を送る華やかなウィーンの上流社会の生活
・結婚したマリアに襲いくるナチスによるウィーンでのユダヤ人迫害の暗黒の日々
・1998年のアメリカロサンゼルスの日常
・ランディと共に祖国に初めてもどった期間

この映画は、家族、祖国、大切なものすべてを奪われ、アメリカに渡ったマリアが国を相手に奇跡を起こす実話なのです。

クリムトが描いた「アデーレ・ブロッホ・バウアー」の肖像画

Gustav KlimtPortrait of Adele Bloch-Bauer, Public Domain, via Wikimedia Commons

「アデーレ・ブロッホ・バウアーの肖像画」
グスタフ・クリムト
1907年、油彩、金、銀・キャンバス
140cmx140cm

アデーレ・ブロッホ・バウアーとは?

クリムトが描いたアデーレ・ブロッホ・バウアー(1881-1925)は、砂糖産業で巨大な富を築いたウィーンの実業家で銀行家のフェルディナンド・ブロッホ・バウアーの奥さん。

映画の主人公マリア・アルトマンの母とアデーレは姉妹で、それぞれブロッホ家のフェルナンドとグスタフ兄弟と結婚していました。

この2家族はウィーンの豪華なアパートに一緒に暮らしていました。子供のいなかったフェルディナンドとアデーレ夫妻にとって、マリアとその姉の親同然だったと映画の中で語られます。

ウィーン社交界のセレブであり、クリムトのパトロンであり親友でもあったアデーレ。ご主人フェルディナンドの注文で制作されたこの肖像画は金箔、銀箔が使われ、絵全体に緻密な装飾がされている大変豪華な絵画です。

アデーレは、肖像画を自分の死後オーストリアの美術館に寄贈するように遺言して1925年に43歳という若さで他界します。

クリムトも映画の冒頭に少し登場します

映画は、クリムトが金箔を丁寧に絵画に載せていく肖像画制作のシーンからスタートです。

彼が見ているのは椅子に座っているアデーレの姿。

肖像画は、クリムトの黄金様式時代の1907年に描かれました。西洋美術では金は中世の時代には多く使われていましたが、ルネサンス以降はあまり使われなくなります。リアルさを絵画に表現するために遠近法の技術が生み出されていったルネサンスでは、金を使うことは奥行きを描くことに不向きだったからです。

しかしクリムトは、金を人物を引き立てるため装飾のように使い始めたのです。

絵をよく見てください!

頭、デコルテ、手はリアルですが、その他は金や銀の模様のようになっていますよね。

映画の内で肖像画は、応接間の暖炉の上に飾られている場面が出てくるのですが、夜になると照明の灯が金箔に反射して神々しいほどの絵だったはず。

絵画はその後ニューヨークの美術館へ

アデーレが亡くなった13年後、1938年にナチスがオーストリアを占拠し、ウィーンに残っていたマリアの両親の自宅から、財産や価値ある家財道具と共にクリムトの肖像画も奪われてしまいました。

1943年に肖像画はオーストリア国立ベルベデーレ美術館に「Lady in Gold」と名前を変えられて展示されました。美術館でこの絵画は大切に展示されていました。

1998年に絵画の返還を求めたマリアと弁護士のランディは、数年かけて勝訴します。そして2006年1月17日、マリアへ絵画の返還が決定し、5枚の絵画はロサンゼルスに展示された後オークションにかけられるなどし、個人の収集家たちに売却されました。

アデーレの肖像画は、誰もが鑑賞できるよう、常時展示することを希望していたマリアの想いを受け、化粧品会社エスティローダーの社長であるロナルド・ローダー氏に1億3500万ドル(約155億円)で買い取られました。この売却価格は当時絵画として史上最高額だったそうです。

ローダー氏自身も母親がユダヤ人であり、2001年ドイツとオーストリアに没収された絵画を展示する美術館としてニューヨークにNEUE GALERIE(ノイエギャラリー)をオープンしていました。

このアデーレの肖像画も自分のためではなく、この美術館に展示するために購入されたと言われています。

「黄金のアデーレ 名画の帰還」の感想

クリムトの絵画の物語はとても興味深く、グイグイ惹きつけられていく展開に映画としてもとても楽しめました。特にマリアとご主人が、両親と別れオーストリアからアメリカへ亡命する場面にはドキドキして見てしまいました。オーストリア政府を訴えてから絵画を取り戻すまでの闘いも同様にどうなっていくのか?と目が離せませんでした。

そして、クリムトが活躍していた時代のウィーンの華やかさは、ユダヤ人が作り出しているところが多かったんだなということも感じられました。

しかしこの映画は完全にアメリカ側からみた話。マリアの訴訟を受けるオーストリア側の人物については深い人物描写がなく、悪者といった印象しか持つことができなかったのが残念でした。

1943年から展示されているオーストリア国立ベルベデーレ美術館では絵画の研究や大切に保存してきた方々がいて、オーストリアの国民に愛されてきた作品であったはず。そちら側の話も知りたいなと思いました。

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