展示作品をみるだけじゃない。豊かな教育の場であるアメリカの美術館事情

 

先日アートのお仕事がテーマの座談会に参加してきました。
そこでアメリカと日本の美術館の違いについてが話題にあがりました。
美術館には作品を保存・管理して展示をするという役割がありますが、
それに加えて”教育の場”としての羨ましいくらいに充実した美術館教育システムがあります。

なぜそのように充実した美術館教育ができるのでしょうか?

理由の一つには、アメリカの美術館の目玉は常設のコレクションだということ。
これは、日本の企画展が多く常設コレクションにあまり目を向けられていない美術館とは事情が大きく違います。

美術館が所蔵する常設作品であれば、期間を定めずに展示することができるため教育のためリサーチをして、プログラムを作り、多くの人に楽しんでもらえるのですよね。

それでは、常設のコレクションが充実している背景と実際の美術館教育について、ちょっとまとめてみました。

 

企業やコレクターからの寄付が美術館を支えている

アメリカには寄付のシステムがしっかりと根づいています。
たとえば美術館で行われているレクチャーやイベント。
無料で開催されるものも多く、”このイベントは◯◯(企業名)の寄付によって開かれましたとフライヤーに書かれていたり、アナウンスがあったりするそうなのです。
参加者にとっては無料で参加できるというメリットがあり、企業側も宣伝効果や社会貢献をする企業であることを示せるメリットがあるのですね。

 

また美術品を収集しているコレクターの死後、遺族によって作品をまとめて美術館へ寄贈するケースも多いそうです。
この場合もコレクターご本人、遺族にとってはコレクションがそのまま美術館に所蔵され、◯◯コレクションと名前が残るという名誉もある。
わたしたち鑑賞者にとっては、作品を美術館で見ることができるという素晴らしさが与えられます。

 

この良い循環が美術館を支えているのですね。

 

美術館の教育とは

 

実際にどんな教育が行われているのか、アメリカ、ニューヨークにあるメトロポリタン美術館のサイトを見てみました。

大きなカテゴリーの中に "Learn"というものがあり、その中には対象者に分けて6つのサブカテゴリーがあります。

Kids and Families(子供とその家族)
Teens(10代の子供)
Adults(大人)
University Students and Faculty(大学生と学部)
Educators(教育者)
Visitors with Disabilities(障害のある方と同伴する方)

 

そして各対象者に向けた情報や、イベントやオーディオガイドの紹介などもあります。

イベントを見ても、先生などの教育者に向けたワークショップ、5歳〜8歳を対象にしたお話し会、トピックが様々なギャラリーツアーなど。

また実際に美術館に行かずとも、美術館ホームページ内でも学ぶことができるようになっています。
先日、エリザベート=ルイーズ・ヴィジェ・ルブランについて調べていたときに、過去にメトロポリタン美術館で開催された展覧会の情報にたどり着きました。
2016年に開催された展覧会ですが、展覧会の詳細が惜しげもなく掲載されています。(全作品が説明と共に!)
そして、オーディオガイドの音声も聞けるのですよ。これには本当にびっくり。

座談会で美術館のサイトでも学べるのですよ!とおっしゃっていた一つの例がここにありました。

 

まとめ

 

日本でもコレクターの寄贈や企業の寄付もありますが、美術品=投資対象というイメージが強いのかなと思ってしまいます。
美術品はたしかに購入された人の一時的な所有物ではあるのですが、同時に世界中の人の宝でもあると思うのです。

美術館への寄贈や寄付の考え方が広まって、美術館による教育活動がもっと活発になっていけば、敷居が高い美術館のイメージも変わっていくのではないでしょうか。
そして、ブロックバスター展のような展覧会で、イベントに来てもらい、有名作品も見もらい、話題のミュージアムグッズを買ってもらうということだけが、美術館の存在価値ではないのですよねー。

自分の好きな作品に出会ってもらう、その作品について、その作者について興味が広がっていく、もっと知りたいし見たい!!と思ってもらえるような学びの場になってほしいなと、美術館ファンの一人として願っています。

 

 

 

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