昨年より、アート思考プロジェクトといった名前で、アートエデュケーターとは別に活動をしています。
ここでは「13歳からのアート思考」末永幸歩著の本にかかれているワークを実践したり、そこから自分たちなりにアレンジした内容などを、3人のメンバーで毎月zoomで顔をつき合わせてやっています。
アートをもっと日常に活かしたいという想いからスタートした私たちの活動は、最初は絵画、写真、文章を対話鑑賞するということをしていました。
そこから「13歳からのアート思考」という本に出会い、本から得たアート思考というものを、どのように役に立つものにできるのか?自分たちを実験台に色々とやっているというプロジェクトです。
4月にわたしたち3人はそれぞれ目標を立て、3ヶ月後にどうなるのか?という試みをすることにしました。
もちろんここでもアート思考のワークをどんどんと取り入れながらです。
3ヶ月後の先月、結果発表を行いました。
結果はどうだったのか?
4月にはまだ先がぼんやりとしか見えていなかったものが、目標がほぼ達成した人、目標の方向に大きく進みつつある人と3ヶ月ですばらしい結果をもたらしたのです。
この結果となった理由を私はこのように考えています。
時間をかけて自分と向き合い、自分の声を聞き続けたこと。
そして目標を達成しよう!!と意気込むのではなく、そのプロセスを楽しんだこと。
それができたのは、”対話型鑑賞”のおかげ。
自分に向き合う、頭を柔らかく別の角度から見ることが自然とできるのです。
そして、アーティストが作品を作るプロセスを大切にするように、自分たちも目標達成の過程を大切にした結果なのです。
アート思考とはまさにこのようなことなのです。
ではこの3ヶ月の活動を振り返ってみたいと思います。
目標設定で大切なのは、明確にすること
4月の第1回目は、決めた目標を発表しあいました。
なぜその目標を立てたのか?具体的にどんなことなのかを説明しました。
その後、目標の文章を対話型鑑賞したのです。
3人でそれぞれの目標の文章を見て、どう感じたのか?どこからそう感じたのか?を発言していく。
これは対話型アート鑑賞と全く同じやり方です。
対話型鑑賞をすると、言葉の裏にあるものが見えてくる感覚があります。
他人が言葉にどのような印象を持つのか?
また期待をするのか?
を聞きながら、自分が立てた目標についてまたじっくりと考える時間となるのです。
面白いことに、この時点で自分でも気がついていなかった目標に込められた気持ちが明らかになってもいきました。
余計なものを削ぎ落とし、大切なところを残す作業となったのです。
頭を柔らかくして、言葉からイメージを膨らます
2回目は中間報告として2ヶ月後の6月に実施しました。
今回は1回目の文章を対話型鑑賞するだけでなく、間に頭を柔らかくするためアート鑑賞を取り入れました。
▼対話鑑賞をしたのはこちらのマティスの絵画です。
https://www.smk.dk/en/highlight/portrait-of-madame-matisse-the-green-line-1905/
「緑のすじのあるマティス夫人の肖像」
アンリ・マティス
なぜこの絵を選んだのか?
マティスの絵はこれまでの絵画の常識を大きく覆し、まず奇抜な色で人をぎょっとさせます。
でもそこには彼なりの絵画に対する考え方が反映されています。
自分の感じたままの気持ちを色に表現してはいけないのか?と、現実を写し取ることから離れていったのです。
常識にしたがっていてはこのような絵は生まれなかったはず。
マティスの絵から感じたことを、彼の絵に対する考え方を対話鑑賞で深め、自分たちの常識を疑おうという試みでもあります。
その後、お互いの目標を見て、一つ一つすばらしいところを出し合うワーク。
これが結構難しい!!
言葉のイメージを膨らます作業はとても頭を使います。
しかし結果言葉がさらに明確になっていきました。
目標に大きくちかづいた
最終の3回目は7月におこない、目標の結果報告をしました。
結果は最初にも述べたように、目標がほぼ達成した人、目標の方向に大きく進みつつある人、と遠くに見えていた目標に大きく近づいたのです。
予想以上に3人の表情が晴れ晴れとしていて、このプロジェクトの効果を実感しました!
そして今回もアート鑑賞を取り入れました。
長谷川等伯の日本絵画と、クロード・ロランの西洋絵画の比較対話型鑑賞です。
描き方、情報量、画材など違うところがたくさんあるなかで、一つ一つ丁寧に取り上げながら、どう感じるのかも話し合いました。
▼長谷川等伯「松林図屏風」
https://www.tnm.jp/modules/r_collection/index.php?controller=other&colid=A10471&t=
クロード・ロランは上にある絵です。
「クレッシェンツァ邸の眺め」
鑑賞が終わると振り返りです。
この目標設定とアートの対話型鑑賞。
内省を深めるには良い効果があることはすでにそれまでの活動で経験済でしたが、それが目標に向かって進むことにどんな効果をもたらすのかは正直未知数でした。
しかし振り返りをする中で、それぞれが気持ちや、その時々に必要なものを絵に投影して見ていたのでは?と思うのです。
そのことが結果自分の気持ちの客観視にもつながって良かったのではないだろうか・・・
クロード・ロランの鮮やかさ、色使いが気になった人は、それまではシンプルが好きだったけど鮮やかさも取り入れていきたいと思ったそうです。
そう気づけたのは、この数ヶ月自分に正直に生きるという良い意味でのわがままで生活してきた結果でした。
私が感じたのは、彼女は職業がら人の話しを聞き、考えるという中で自分を抑えていたのではないだろうかということです。
でも自分により素直になったことで、本来自分が望んでいたことに出会えたのかもしれません。
また長谷川等伯の墨の世界、余白、引きの美学が好きな人。
彼女は、自分の今後やることに色々と入れたくなるけれど、等伯の絵のように一番大切にしたいことのための余白を持とうと思ったそうです。
等伯の絵は一見情報量は少ないけれど、そこには大きな世界が描かれています。
彼女の目指すところはそこなのではないかと感じました。
好きな絵は1年後も10年後も変わらないかもしれないけれど、そこから受け取るものは時間がたつときっと違うのだろうと思います。
さて、このプロジェクト今後はどうする?
これまで3人だけでやってきた活動に新たに人に加わってもらおうと計画しています。
これが自分らしく生きていくための、アートを使った目標達成プロジェクトとなっていくといいなと思っています。