【展覧会レポート】「夢をめぐる 絵画の名品より」アサヒビール大山崎山荘美術館

 

アサヒビール大山崎山荘美術館で3月20日からはじまった「夢をめぐる 絵画の名品より」の展覧会に行ってきました。
1996年4月に開館した美術館は、今年25周年になるそうです!!
そのため美術館の名品を集めた、力を入れた展覧会になっています。
「夢」というテーマで厳選された作品に、こんな作品も持っている美術館だったのかと驚きもありましたよ。

 

大山崎山荘美術館は、実業家だった加賀正太郎氏の別荘だった建物が美術館になっている、展示スペースとしては小さな美術館です。
しかし、その分一つ一つの作品とじっくり向き合うことができる。
見た作品を記憶に残して、家に帰ってからも思い出したい。
そのためにはこれくらいの展示数がちょうどいいよねと思ってます。
だって、次いつこの作品に出会えるかわからないわけですから。

展覧会のみどころ、展覧会のためだけのお楽しみをご紹介します。

 

展覧会のみどころ

パリに集まった画家たちの作品

19世紀後半から20世紀はじめのパリには、ヨーロッパ各国から夢を抱いて多くのアーティストが集まっていました。
アートの中心地がパリだったからですよね。
生い立ちなどさまざまなアーティストたちが集まる安いアパートがあったり、カフェに集まって夢を語りあったり、新しいアートもどんどん生まれていく。

クロード・モネ
エドガー・ドガ
ピエールーオーギュスト・ルノワール
フィンセント・ファン・ゴッホ
ポール・シニャック
ピエール・ボナール
パブロ・ピカソ
アメデオ・モディリアーニ
ジョルジュ・ルオー
アルベルト・ジャコメッティ

わたしが特に気に入ったのは、ゴッホの「窓辺の農婦」という横向きの女性の顔を描いた作品。
ピカソの青の時代の「肘をつく女」

そしてこんな楽しみ方もおすすめです!

ドガとルノワールの作品が並んでいるので、2人の女性の肌の色の出し方を比べてみる。
シニャックの点描画やボナールの作品は、離れて見たり、近寄って見たり、描き方で見え方がどのように変わるのかを感じてみる。
ピカソの「横たわる女」では身体がどうなっているのか?ここはどんな視点から描いたのか?頭をめぐらしてみる。
ルオーの作品は、太い輪郭線で描かれるとどんな印象になるのか?他のアーテイストの作品と比較してみる。

 

彼らの作品が集められているのが、安藤忠雄建築の「夢の箱」という別館。
別荘として使われていたとき、蘭の栽培をしていた温室へとつながる大きなガラス窓がある通路を通っていきます。
この通路も美しいですよ。

 

モネの直筆の手紙

モネ直筆の便箋2枚と封筒の手紙の展示もありました。
1915年6月14日に、パリに住んでいる友人でもあり美術評論家のギュスターヴ・ジェフロワへ宛てたもの。
モネはスケッチ旅行でエトルタという場所に来ていたときにジェフロワと知り合い、後にモネの伝記も書いている人物です。

手紙の内容は、モネの自宅があるジヴェルニーへ来るための直前の連絡。
詳しくは見てのお楽しみですが、こんな内容です。

何時の電車に乗ると何時に着くから。
車が2台迎えにいきますよ。
天気が良いといいね。

今の自分ならスマホで送っているような日常的なメッセージ。
大切な人への手紙なんだなぁ。
モネの字体も見れてプライベートな面が見えてとても嬉しい展示でした。

モネの住んでいたジヴェルニーはパリからこのくらい離れた場所にあります。
手紙で指定していたマントという駅は、このマント=ラ=ジェリー駅のことだろうか?

 

 

安藤忠雄建築の特別室で見られるモネの睡蓮連作

大山崎山荘美術館のおすすめポイントに、安藤忠雄建築が2つあって、別荘だった本館とうまく調和してつながっているところにあります。
モネの睡蓮の連作は、パリのオランジェリー美術館のミニ版のように、円形の建物の中に飾られているのです。
ここはいつもモネの睡蓮のための特別室となっています。

 

モネは睡蓮の絵を約200点くらい描いています。
その間に、大切な人を失ったり、白内障で視野が変わっていったり、第一次世界大戦へと突入する。
今回は展示では、1907年の初期の方の睡蓮から、亡くなる数年前のまるで抽象画のようになっていく庭に架けられた太鼓橋の絵まで6点が見られます。

 

モネの絵がどのように変化していったのか、彼が描きたかったことを気持ちに寄り添うように見ていきました。

 

右に見えているコンクリートとガラスの部分は、モネ展示室に行くための階段です。

 

 

モネとの関わりのあるアーティストの作品

モネとの関わりという視点から選ばれた作品も、名品揃いで見逃せません!

 

コンスタン・トロワイヨンの「農耕」

バルビゾン派という田園風景を美しく情感あるれる絵で表現した画家の一人トロワイヨン。
モネはトロワイヨンの作品に惹かれ、彼に直接会いに行きました。
デッサンと学ぶこと、ルーヴル美術館で模写すること。トロワイヨンからこんな助言をもらったのだとか。
トロワイヨンの作品は、本館の2階へ上がる階段の壁に掛かっています。気がつきにくいので見逃さないように!
そして、この作品はあの「旧松方コレクション」だったようです。

 

オーギュスト・ロダンの「考える人」

ロダンは「考える人」はもう説明するまでもなく有名ですよね。
ここで飾られているのは小さな考える人像。
モネは美術界で認められていき、フランスを代表する彫刻家となっていたロダンと回顧展をする話しが持ち込まれるようになりました。
1889年には「モネとロダン展」が開催されます。
この考える人は、モネの展示室の入り口横に飾られてます。こちらも見逃さないでくださいね!

 

サム・フランシスの2点の絵画

サム・フランシスは1923年に生まれたアメリカ人。モネが亡くなった1926年には3歳。
アメリカ空軍に勤務中、飛行訓練の事故にあい闘病生活に絵を描き始めました。
ドリッピングというキャンバスに絵の具を垂らして描く技法です。
1953年にオランジェリー美術館でモネの大きな睡蓮の絵を見てから、作品の色が豊かになっていったと言われてます。
どちらの作品も素敵だけど、残念なのは会場があまりスペースがなくちょっと窮屈な感じで展示されていました。
彼の絵はもう少し広いスペースで色彩と空間を感じたいと思ってしまいました。
こちらの絵は、ルノワールらの作品がある「夢の箱」という別館に飾られています。

 

 

この展覧会だけのお楽しみ

特別冊子

展覧会用につくられたミニ冊子がもらえます!
14ページに渡って、作品の説明、アーティストの紹介、モネを中心とした今回の展示作品のアーティストとの相関図。
またアーティストたちがどんな夢を持っていたのか?を探る夢に関するコラムも。
読み応えがあり嬉しいですね。

 

展覧会のための特別デザート

本館の2階にある美術館のカフェ。
こちらではいつも展示会ごとに、作品などをイメージしたケーキが用意されています。

今回は、モネが暮らしていたジヴェルニーの庭をイメージしたケーキ。
そして大山崎山荘をイメージしたケーキの2種類がありました。
私が食べたのはこちらのジヴェルニーの庭の方。
モネが残した自作のレシピをアレンジして、ほうれん草が使われているスポンジにピスタチオクリームのを挟んだケーキ。

カフェはテラス席もあり、ここからは京都南部、奈良の山までが広がるすばらしい景色が見えます。
爽やかな風を感じつつ過ごせます。

 

展覧会がスタートした初日の天気の良い週末だったから、人が多かった。
このテラスは写真だけ撮りに出入りもできるし、席も予約が入っているとのことで、ゆったりと過ごすというわけにはいきませんでしたが、日にちや時間を選べばのんびり過ごせそう。

 

展覧会情報

「夢をめぐる 絵画の名品より」
アサヒビール大山崎山荘美術館
開催日:2021年3月20日〜7月4日 *会期中に展示品の入替えがあります
開館時間:午前10時〜午後5時
美術館公式サイト:https://www.asahibeer-oyamazaki.com/

 

 

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