ダンテ・ガブリエル・ロセッティの展覧会がテート美術館で開催中『THE ROSSETTIS』

今年は自分の環境を変え、長いことできていなかった海外旅行へ行こうと計画しています。行き先はイギリス。
最後に行ったのはもう7年くらい前になるはずです。

そんな中久しぶりにロンドンのテート美術館(Tate Britain)のホームページを見ていたら、『THE ROSSETTIS』という展覧会が目につきました。

そう、ラファエル前派のダンテ・ガブリエル・ロセッティの展覧会です。
場所は、ラファエル前派の作品を数多く所有するロンドン、テート美術館!!
なんとテートではロセッティの初の回顧展になるのだとか。
さらにイギリス外では最大規模のラファエル前派コレクションを持つ、アメリカの美術館からの作品も加わるという見逃せない期会。


この記事では、展覧会『THE ROSSETTIS』をご紹介します。

(※この記事のイメージ画像は、メトロポリタン美術館所蔵の「レディ・リリス」の水彩画)

ダンテ・ガブリエル・ロセッティの展覧会がテート美術館で開催中『THE ROSSETTIS』

Bocca Baciata (Lips That Have Been Kissed) by Dante Gabriel Rossetti, public domain, Boston's Art Museum

展覧会の概要を見てみましょう!

展覧会タイトル:THE ROSSETTIS
開催美術館:Tate Britain (テートブリテン)
      Millbank, London SW1P 4RG
日程:2023/4/6〜9/24
料金:大人22ポンド
   メンバーシップに加入すると無料
展覧会公式ホームページ:https://www.tate.org.uk/whats-on/tate-britain/the-rossettis

この記事を書いている2023年5月27日現在で、22ポンドは約3800円。
日本の展覧会の値段と比較するとかなり高い印象ですね。

でもメンバーシップに加入すると予約も必要なく、無料で入場できるよう。
メンバーシップは、イギリス内のテート美術館全4館共通で、年間72ポンド。
月ごとの購入もできるようなので、旅行者だとこれがいいのかも?

『THE ROSSETTIS』はどんな展覧会なのか?


展覧会は、ラファエル前派の中心的な存在のダンテ・ガブリエル・ロセッティと妹で詩人のクリスティーナ、そして妻で画家のエリザベス・シダルの3人を中心にその世界を追求するもの。

その他にもロセッテイ家の兄弟、マリア、ウィリアム・マイケルのロセッティ一家の芸術を紹介しています。

そう、これはロセッティ家の展覧会!だからタイトルが『The Rossettis」だったのです。


ラファエル前派(The Pre-Raphaelites)ってなんだか難しい言葉ですよね?
発音も毎回考えてしまうし・・・

Pre-raf-e-liteと読むと良いとテート美術館では教えてくれてました!わかりやすい。

名前はルネサンスの巨匠ラファエロ(ラファエルは英語読み)からきています。

ラファエロを史上最高の画家として讃え、古典的スタイルにこだわるアカデミー(美術学校)に反発した若いアーティストたちが、自分たちの理想をラファエロより前の時代に求めた。
だから「ラファエロの前」としてこの言葉が生まれたというわけです。

中世への憧れは、産業革命で都市の生活はどんどん近代化していった19世紀のイギリスでは当然の流れだったのかも。
彼らは、童話、神話など中世の書物からインスピレーションを受けた世界観を、まるで4k画像のようなリアルな表現で作品を作っていきます。


このラファエル前派を取り上げた展覧会はよくあると思うのですが、『The Rossettis」が違うのは、ロセッティ家の「絵画」「詩」を中心とした作品で、”現代の愛”を紹介しているところ。

彼らの愛の形・アートの表現方法・生き方も当時はずいぶんと革新的だったようです。
それはイタリアの学者の父親が革命家で、国を出てロンドンに移ってきたことにも大きく関係しているのでしょう。

ダンテ・ガブリエルの絵画、デッサン、水彩画、シダルのデッサン、クリスティーナ、マリア、ウィリアム・マイケルの詩や散文など、ロセッティ家が生み出した作品を一緒に鑑賞することができるのです。

これはとっても興味深い!!

アメリカのデラウェア美術館とテート美術館の作品が一緒に展示される


アメリカになせラファエル前派作品の充実している美術館があるのだろう?

今回テート美術館と一緒に展覧会を企画したデラウェア美術館(Delaware Art Museum)について調べてみると面白い発見がありました。

ちなみに、『The Rossettis」はテート美術館での展示が終了後、デラウェア美術館へ巡回されます。
(2023/10/21-2024/1/28)


美術館は1912年に、アメリカ・デラウェア州のウィルミントンに開館。
(デラウェア州はフィラデルフィアに近い場所にあります)
地元ウィルミントン出身の著名なイラストレーター、ハワード・パイルに敬意を表して設立されたのが始まりです。


そして、イギリス以外で一番多くのラファエル前派コレクションを所蔵している美術館。
コレクションは、ウィルミントンの繊維製造業で成功したサミュエル・P・バンクロフト・ジュニア(1840-1915 Samuel P. Bancroft Jr. )が収集したもので、バンクロフトは特にロセッティに強く惹かれてたようです。

コレクションは絵だけでなく、下絵、家具、アクセサリー、手紙類など幅広い。
そしてロセッティの詩「The Portrait」の写本もあるというからびっくり。
これはあのエリザベス・シダルの墓に入れたものの、後から発掘したという驚きのエピソードがあるものじゃないか!

だから今回は、アメリカとイギリスで離れていたロセッティの作品が一堂に回するという貴重な期会なのです。

デラウェア美術館のホームページによると、今回の展覧会の見どころは、ロセッティ夫妻の関係性について触れていることだと書かれていました。

ダンテ・ガブリエルとと詩人であり芸術家でもあったエリザベスは、お互いにアーティストとして探求するテーマを共有していたようです。
32歳という若さで亡くなってしまうエリザベスの作品はガブリエルの影響を受けていたと考えられてきたようですが、どうやら新しい研究によってそのテーマはエリザベスから始まっているということがわかったのだとか。

そのエリザベスのドローイングを最大規模に展示しているようです。

2人が当時、どれだけ新しい感覚で愛、階級、性、ジェンダーなどのテーマを考えて作品で表現してきたのか?
今私たちの周りでも議論されることの多いこのテーマを考えてみるきっかけになるのかもしれません。

ロセッティ家から”クリエイティビティ”の大切さを学ぶ

ロセッティ家では、4人の兄弟は子供の頃から父より文章を書いたり、美術をしたり自分の表現方法を追求することを教えられていたようです。

自分の頭で考えて生み出すことができるって、これまでもそうだったけど、今後もますます必要になる力だと思うのです。
豊かな想像力から生まれてきたアイデアを、言葉、映像、音楽、ファッション、製品、サービスなどで現実の形にできること。
それは決して誰かの真似とかではない。

だから2023年の後半は、創造的であること・自己表現や情熱を追求することに強く刺激されに、『The Rossettis』展を見に行こうと考えています。



こちらのブログ記事をすごい方にご紹介していただけました!!きゃー嬉しい🤗
ロンドンを拠点にライター、編集者としてご活躍されている江國まゆさん。
江國さんが立ち上げられたイギリス情報サイト「あぶそる~とロンドン / Absolute London」の『THE ROSSETTI』の展覧会レポートの中で私の記事をおすすめしてくださっているのです。

展覧会レポートでは、会場の様子、展示されている作品などもたっぷり紹介されていて、早く行きたくなりました!!
そして、ロセッティの描く女性の顔のこと、何だかすごく納得。
そう、どの絵にもロセッティ好みの女性しかいないのだ・・・笑
ラファエル前派の巨匠、ロセッティ展に想う @テート・ブリテン






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