展覧会レポート 美術館

イギリス生まれのウィンザーチェアの魅力 【日本民藝館】

2017-10-27

 

こんにちは。

久しぶりに東京に来ました。前回来たのは2年前?3年前?ここは美術館や博物館はもちろん、アートイベントが盛りだくさんであれも見たいこれも見たいと欲張りになってしまいます。日本民藝館はまた行きたいと思っていた場所。10数年前大学の授業の中で来たのが初めてで、自分の好きな要素がたくさん詰まったこの美術館は後々もよく思い出す大好きな場所になりました。何がそんなに良かったのか?美術館の建物、美術館のある環境、美術館の成り立ち、展示品・・・全てに感動したあの日。そこからやっと2回目の訪問ができました。

日本民藝館

1936年にできた日本民藝館には初代館長の柳宗悦(1894-1978)によって選ばれ集められた陶磁器・染織品・木漆工品・絵画・金工品・石工品・編組品など、日本をはじめ諸外国の新古工芸品約17000点が収蔵されています。1925年、柳宗悦はそれまで重要視されることのなかった普段使いの品々の美に着目して、濱田庄司や河井寛次郎らとともに無名の職人達が作った民衆的工芸品を「民藝」と名付けました。そして、翌年1926年には陶芸家の富本憲吉が活動に参加し、4人の連名で「日本民藝美術館設立趣意書」を発表しました。民藝品の公開・展示だけでなく、調査・蒐集や保存・管理するための美術館施設の設立計画を進めていったのです。1936年にここ東京駒場に美術館が開設されると、柳はここを活動の拠点として、展覧会や、日本各地の工芸調査研究を展開していきました。柳が進める民藝運動に参加したバーナード・リーチ、濱田庄司、河井寛次郎、芹沢銈介、棟方志功、黒田辰秋などの工芸作家は、実用という目的から離れた当時の工芸の在り方に一石を投じるなど、日本の近代工芸界に大きな流れを作っていきました。柳のあと美術館館長はそうそうたるメンバーで繋がっていきます。二代目館長はは陶芸家の濱田庄司(1894-1978)、三代目は宗悦の長男でプロダクトデザイナーの柳宗理(1915-2011)、四代目は実業家の小林陽太郎(1933-2015)、そして現在はプロダクトデザイナーの深澤直人が継いでいます。

イギリスでは柳が民藝論を唱える約40年前、産業革命によって作り出される低質な工業製品を批判し、手工芸の美しさや尊さを訴えるウィリアム・モリスらによるアーツ・アンド・クラフツ運動がおこっていました。この運動は世界的に影響を与えました。結果的には運動の理念や目指すデザインが違うことで批判することになるのですが、柳もこの運動に影響を受けて民藝運動を起こすのです。

ウイリアムモリスの壁紙にうっとり【Speke Hall, Garden and Estate】その1

ウィンザーチェア

 

さてさて、今回の企画展は「ウィンザーチェア ー日本人が愛した英国の椅子」というもの。貴重な椅子がじっくり全方位から見ることができました。「ウィンザーチェア」と聞いてどんな椅子か分かりますか? 私たちにも馴染みのある背もたれに棒がたくさん並んだ椅子のことです。ウィンザーチェアの基本形状は時代や国を超えて今でも多くの家具メーカーが手本にして、人気のある椅子です。いつか手に入れたいと私が憧れるイギリスのアーコールの椅子。アーコールの椅子もウィンザーチェアからの発展形。

ウィンザーチェアにはいくつか種類がありますが、写真のコムバックチェアはウィンザーチェアの中でももっとも古い形で、当初はアーム付きがほとんどでした。背もたれの上に水平な板がありそこから細くてまる棒が並ぶ形が櫛(comb)のように見えることからコムバックチェアと名付けられました。丸い棒がとても細くてこんな華奢で支えられるの??と思いながら見ていました。背もたれの繊細な感じとは逆に座面や脚は厚みがあり、木の模様や形を生かしたワイルドな感じとなっていてその取り合わせがとても面白いなぁと感じました。

他にはボウバックチェアというのがあります。背もたれのアーチ型の曲げ木が弓(bow)の形に似ていることから名付けられたもの。スモーカーズチェア、ファンバックチェアなど様々な名前が。面白い。

ウインザーチェアは18世紀前半にイギリスで生まれた椅子。自然で素朴な美しさ、実用的であることを考えられた椅子は、すべてに木を使い、座板に脚や背もたれ部分の棒が直接差し込まれているのが特徴です。産業革命が進み都市部での人口が増えていくのに伴ってウィンザーチェアはどんどん普及していきました。無垢材で作られた丸棒と平板からなるシンプルな構造はどんどん進化していきました。今私たちの周りにあるモダンな椅子もウィンザーチェアがその原型。今もそのデザインは認められているんですね。

柳宗悦は1929年に陶芸家の濱田庄司と一緒にイギリスに行きウィンザーチェアを含む約300点の椅子を購入したそうです。その椅子は東京で展示、販売され日本でのウィンザーチェアの発展に大きな役割を果たしました。バーナードリーチは長野の松本民藝家具にウィンザーチェアを紹介しそれが松本民芸家具を代表するウィンザーチェアの基礎となったそうです。

この展覧会にはウィンザーチェアの他に欧米の様々な椅子が展示されていました。素材をそのまま生かしたフィンランドのワイルドな椅子、子供用の可愛らしい椅子などとても楽しめる展示でした。

日本民藝館
東京都目黒区駒場4−3−33

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