365日絵のなかで”旅”をする 旅するアート鑑賞

イザベラ、またはバジルのの壺の世界を巡る旅ージョン・エヴァレット・ミレイ【365日絵のなかで旅をする】

2024-03-03

今回の旅は、イザベラ、またはバジルの壺の物語の世界を旅します。
絵に描かれた物語の世界の旅は、私の大好きな旅。ミレイの絵はその楽しみを存分に伝えてくれます。

今回は残酷な恋物語ですが、美しい絵の中に暗示をたくさん配置しながら、複雑なストーリーを1枚の絵で伝えてくれています。

美しい壁紙の室内で食事を楽しむ人々。部屋からは青空の庭園が広がって庭園の景色も見える豊かなひととき……に見えますが、本当にそう?

白いタイツの男性の表情をよく見てください!睨みつけるような顔でテーブルの右側に座る男女を見て、足で犬を蹴ろうとしてる。

この険悪な雰囲気は何?


テーブルの右側に座っている男女、ロレンツォとイザベラは愛し合っています。でも自分たちの関係を秘密にしていました。

しかし2人の想いに気づいたのはフィレンツェの裕福な商人のイザベラの兄。イザベラの結婚相手には、同じように裕福な貴族をと計画していたので、自分たちの使用人ロレンツォとの交際は大反対だっのです。

怒りを2人にぶつける兄。

手にはくるみ割りの道具を力いっぱい握りしめて、歯を食いしばり、足でイザベラの犬を脅しているのです。

彼の隣にはの隣にも2人のの兄弟も座っています。こちらは落ち着いては見えますが、これからの起こる恐ろしい行く末を暗示しています。赤ワインの向こうに見えるイザベラとロレンツォを見つめ、何か思案しているようです。

これは、中世イタリア、ボッカチオBoccaccio (died 1375). の小説をもとにした詩人ジョン・キーツJohn Keats (1795-1821)の詩(イザベラ、またはバジルの壺)からテーマをとって描かれた絵です。

この物語の続きはどうなったと思いますか?

イギリスの画家、ジョン・エバレット、ミレイは、私たちにストーリーを示すための意味を込めたものをたくさん描きこんでます。 それはこれから起こる暴力的な暗示…

ロレンツォが持っているオレンジの乗ったマヨルカの皿には、ダビデが巨人ゴリアテを倒して首を切り落とした旧約聖書の場面が描かれています。

さらに平和の象徴の鳩の白い羽を引っ張るハヤブサの姿も。鳩はどうなったのか・・・

物語は続きます。
兄達はロレンツォを旅に同行させ、その途中で彼を殺害し埋めてしまうのです。

イザベラには彼に仕事を言い渡したと嘘をつく。ある晩全然連絡のないことを心配するイザベラの夢に、殺害されて埋められた自分を見つけてほしいと言うロレンツォの亡霊が現れます。

メイドを連れて彼を探し当てたイザベラは悲しみに打ちひしがれます。遺体を持ち帰るには重すぎる。切断した頭部を持ち帰り、鉢に埋めて隠しバジルを植えました。バジルはイザベラの悲しみの涙で成長していきます。

バジルの鉢への異常な執着が気になった兄達は、鉢を調べロレンツォの頭部を発見します。再びどこかへ埋めてしまい、深い悲しみの中イサベラも亡くなってしまいます…

あまりにも悲しい話です。


でも、ミレイはロレンツォとイザベラの愛の証も描きこんでいます。

オレンジは愛を象徴していて、差し出されたイザベラは平静を装っていますが、ロレンツォは彼女の顔を見ずにはいられない。抑えられない愛が溢れています。

2人の背景には、美しい青空とアーチがあって、ロレンツォの頭の上には白バラが、イザベラの上にはトロピカルの花で彩られているのです。



この絵を描いたミレイは、1848年に友人のダンテ・ガブリエル・ロセッテイ、ウィリアム・ホルマン・ハントたちと、ラファエル前派兄弟団を結成。

彼らの活動を駆り立てたのは、当時の美術アカデミーの教えではなく、イタリアルネサンスのラファエロの時代より前の美術に目を向けることでした、

そこに見出したのは、ルネサンスやバロック美術のように、華やかさ、躍動感、あざらかな筆の動きではなくて、単純さやより真実に近いもの。

ミレイは、"自分はラファエル前派兄弟団だ!"と宣言するために、PRB(Pre-Raphaelite Brotherhood)という文字を描きこんでます!

どこだかわかりますか?

イザベラが座っている椅子の足をよく探してみてください!!

タイトル:イザベラ、またはバジルの壺(Isabella,or the Pot of Basil)
画家:ジョン・エヴァレット・ミレイ(John Everett Millais)
制作年:1848ー49年
所蔵館:ウォーカーアートミュージアム、リパプール


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