西洋絵画で聖書の物語を読む 【東方三博士の礼拝】ディエゴ・ベラスケス

東方三博士の礼拝 / Adoration of the Magi
ディエゴ・ベラスケス / Diego Velazquez
1619年
油彩・カンヴァス
203 x 125cm
ブラド美術館(スペイン)

東方三博士の礼拝

[東方三博士の礼拝、とうほうさんはかせのれいはい]

東方三博士の礼拝はイエスの誕生に贈り物を捧げ祝福を受けている場面が描かれます。

ローマ皇帝から命令によって、人口調査のため戸籍のあるベツレヘムに来ていたマリアとヨセフ。そこでイエス・キリストは誕生します。

救世主となるイエスの誕生を告げる星をみた東方の3人の賢者(博士=占星術師)はその星に導かれ、イエスが誕生した厩(家畜小屋のうまや)にたどりつきました。豪華な衣装を着た3人は、生まれたばかりのイエスに贈り物をささげて、祝福を受けていますよね。

3人の博士はヨーロッパ、アジア、アフリカの三大陸や、老年、壮年、青年の三世代で表されたりします。それは、全世界がキリスト教会のもとに集まっているということも表しているのです。

博士はそれぞれ贈り物を持っています。

1つは没薬。香料や鎮痛剤、防腐剤として使われた樹脂で、死体を保存するための薬品のためイエスの死を暗示しています。
1つは乳香。主に香料として使われた樹脂。イエスの神性を意味しています。
1つは黄金。これはイエスの王権を表しています。

この絵はベラスケス20歳の名作

こちらの絵を描いたのは、スペイン画家のディエゴ・ベラスケス。1599年、スペインのセビーリャで生まれました。

彼が20歳の時の作品は新約聖書の中のイエス・キリストの誕生を祝う博士たちを描いています。

16世紀末ころから盛んになったバロック美術。

明暗の強調や躍動感いっぱいの劇的な表現が特徴です。

このベラスケスの作品も、暗い影の部分に対して、光が当たって浮かび上がる部分のコントラストがより物語をドラマチックに伝えてくれます。

狭い空間に多くの人数を描きこみながらバランスがよい構図も素晴らしいです。

家族を描き込んだ新約聖書の物語

ベラスケスはこの絵に自分の家族を描きこんでいます。

聖母マリアは妻のファナ・パチェーコ。
イエスには娘のフランシスカ。
手前の博士は自分自身。
さらに奥の髭の博士は師匠でもあり義理の父でもあるフランシスコ・パチェーコをモデルにしたと言われています。

ベラスケスは10歳で見習いとして師匠のもとに入ります。セビーリャの画家組合の総裁でもあったパチューコは、教養もあり実力も認められた画家でした。そんなパチェーコのもとで、ベラスケスは画家の技術、古典文学などの教養も身につけていったのです。

17歳になったベラスケスは師匠に画家としても1人の男としても認められ、パチェーコの娘のファナ14歳と結婚したのです。


 

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