大阪市立美術館でスタートしたメトロポリタン美術館展に行ってきました!
展示作品数は絵画が65点。
作品番号1番は、1420年ごろの「キリスト磔刑」が描かれたテンペラ画。
そして最後に飾られていた作品が、今から約100年前の1916年の「睡蓮」を描いた油絵です。
展覧会の副題は<西洋絵画の500年>。
この展覧会での注目ポイントは、作品一つ一つが魅力的であるだけでなく、西洋美術の移り変わりを絵を見ながら楽しめるようになっていることです。
私は、公式サイトで紹介されていた絵はしっかりとチェックしていました。
でもその他の作品は会場でのお楽しみだったので、あーあの作品がある!!と嬉しい対面も多くてとても楽しめました。
見応えのある作品が多かったです!
さらに凄いなと感じたのは、なぜその絵が選ばれているのか、一枚一枚から意味がしっかりと伝わってきたこと。
美術史の中での転換期をはっきりと伝える作品の比較ができるものが多かったことです。
テーマやモチーフが同じ作品を比較して見る
時代の移り変わりによる絵の変化や、画家の特徴を感じるために、絵の比較をしてみると気がつくことが多いはず。
展示されている作品はその比較ができるものが数多く出ていました。
例えば子供を描いた絵が結構出ていました。
それは、単体の肖像画だけでなく、2人の子供を描いた絵であったり、家族と一緒に登場していたり、大勢の大人の中にいる子供だったりとさまざまです。
さらによく見ていると、子供たちがある共通の物が一緒に描かれていることに気がつきました!
3枚の絵をご紹介しますね。
「テラスの陽気な集い」
ヤン・ステーン
1670年ごろ
「ホセ・コスタ・イ・ボネルス、通称ペピート」
フランシスコ・デ・ゴヤ・イ・ルシエンテス
1810年
もう一枚の絵は、画像がダウンロードができないようになっているため、メトロポリタン美術館サイトのリンクを貼っておきます。
▼こちらです
https://www.metmuseum.org/art/collection/search/438435
「木馬に乗るジャン・モネ」
クロード・モネ
1872年
1枚目の絵は、ヤン・ステーンの描くテラスで酔っ払った陽気な大人たちの中にいる少年。
左手前にいます。
2枚目はゴヤが描いた著名な医者の息子の肖像画。
3枚目はモネが描いた息子ジャンの絵です。
さて、共通しているのものは何だか分かりますか?
木馬です。
同じ木馬でもその遊び方や描かれ方で、画家が表現したかったことが違っているなと感じませんか?
さらに時代背景を考えると、
1枚目のステーンの絵では、周りの大人と一緒に悪ふざけしている少年は、木馬を犬に引かせようとしている。
犬はとても不機嫌そうです。
オランダ絵画らしい教訓的な意味も読み取れます。
2枚目のゴヤの絵では、少年は軍服を着ていて、後ろには銃のようなものも見えます。
描かれているものはスペインの独立戦争が関係していると言われています。
(スペインの独立戦争:1804-1818年)
▼スペインの独立戦争についてはこちらに詳しく書かれています。
世界史の窓 スペインの反乱/スペイン独立戦争
ここでの木馬は、悪ふざけのおもちゃでも、子供のおもちゃでもないのですね。
ゴヤはこのように社会状況を汲んだ作品を描いていました。
3枚目のモネの絵では、ステーンやゴヤの絵のように、描かれた物に何か特別な意味があるのだろうか?と考える必要はありません。
印象派の画家たちが大切にしたものは、自分たちが描きたい身近な世界を描くこと。
今では当たり前のようなことですが、画家は注文主から発注を受けて絵を描いていた時代が長くありました。
モネは、無邪気に遊ぶ可愛い我が子の姿を捉えたのです。
肖像画が少ないモネなので、そういった意味でも見ることができて良かったと思った作品です。
展覧会の感想は・・・
このように選ばれている作品、展示の順番もすごく練られています!!
でも、そういうことが説明からはあまり伝わってこなくて少し残念。
作品横のパネルにも、今回借りた音声ガイドも、一つ一つの作品の解説はとても丁寧です。
しかしもっとこう見たらいいよ!を伝えて欲しいなと思ってしまいました。
そうしたら、一枚一枚の作品を楽しむということだけでなく、美術史という流れの中でこういう絵なんだなって感じられると思うのです。
この知識や経験は、これからの美術鑑賞にもとっても役に立つことだと思ってます。
展覧会の情報 → 展覧会は終了しています
「メトロポリタン美術館展ー西洋絵画の500年」
大阪・大阪市立美術館 2021年11月13日〜2022年1月16日(終了)
東京・国立新美術館 2022年2月9日〜5月30日
▼ メトロポリタン美術館展の画家の絵を使った、画家の出身地マップを作りました!!
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