西洋美術史

"再発見”された「シャルロット・デュ・ヴァルドーニュの肖像」マリー・ドニーズ・ヴェレール

「シャルロット・デュ・ヴァルドーニュの肖像」
マリー・ドニーズ・ヴィレール
1801年
メトロポリタン美術館所蔵

今日は、”再発見”という言葉について書きたいと思います。
本や、解説などを読んでいるときに、作品やアーティストが再発見されたなどと書かれていることがあります。
忘れられていた画家が再び日の目をみたりして、それまで気づかなかった良さが改めて世の中に認識されるとき使われます。

女性画家が描いた作品の中には、正当に評価されず男性画家の作品と勘違いされているものが多くあるそうです。
この絵もそんな中の1つでした。

↓絵の全体像はこちら

Marie Denise Villers : Portrait of Charlotte du Val d'Ognes, Public Domain, via The Metropolitan Museum of Art

新古典主義の巨匠ダヴィットの絵だと思われていた


こちらの絵、現在はマリー・ドニーズ・ヴィレール作とされていますが、それまでは誰の絵と間違えられていたのでしょうか?

1995年にある美術史家が発表するまで、ジャック=ルイ・ダヴィッドの作品とされていました。
ダヴィットといえば、フランスの新古典主義の代表的な画家。
ナポレオンが勇ましい姿で白馬に乗っている肖像画や、ナポレオンの戴冠式の絵など、教科書にも載るような有名な画家です。

メトロポリタン美術館のサイトによると、ダヴィット作の絵としてヴァルドーニュ家では受け継がれてきて、19世紀後半に売却されることによって初めて世の中に出てきたそうです。

Jacques-Louis DavidNapoleon Crossing the Alps, Public Domain, via Wikimedia Commons


サン=ベルナール峠を越えるボナパルト
ジャック=ルイ・ダヴィット
1801-1805年

新古典主義についてもう少し知りたい方はこちらもどうぞ


ダヴィットの絵からマリー・ドニーズ・ヴィレールの作品へ。

さらに、メトロポリタン美術館のサイトでは、ダヴィットの絵からどうやってヴィレールの絵になったのか詳細に書かれています。
1951年、フランスの学者でキュレーターのシャルル・スターリングは、この絵がダヴィットの絵ではないと考えていたというのです。
そしてこの絵が1801年のサロンに出されていたことを当時の記録を丹念に調べて発見しました。
なんと、ダヴィットは1801年のサロンには絵を出品していないのだそうです。
さらに調査の結果、コンスタンス・マリー・シャルパンティエ作として受け入れられることになります。


しかし、1996年、美術史家マーガレット・オッペンハイマーによって、マリー・ドニーズ・ヴィレールという画家の作品であるという新たな主張が発表されました。
なんでもルーブル美術館にある、彼女の別の作品との比較調査の結果によるところが大きいそう。

このように、ダヴィット作と思われていた肖像画は、長い時間と専門家の調査の結果、ヴィレールの絵であるということになったのです。


肖像画の所有者の移り変わり

「シャルロット・デュ・ヴァルドーニュの肖像」は、ヴァルドーニュ家の子孫によって売却されたことによって、世の中に出てきたことは前に書きました。

ヴァルドーニュ家から売り出された肖像画は、ウィルデンシュタインという画商を通して、パリのモーリス・ド・ロスチャイルド男爵へ所有者が変わります。

さらにその後同じ画商を通してアイザック・D・フレッチャー夫妻の元へ。
1917年に夫妻の遺贈により絵はメトロポリタン美術館にコレクションされます。

売却によって所有者が変わったり、美術館に所蔵されることによって、専門家の調査が入り記録が残っていく。
このように新たな事実が浮かび上がることもあるのですね。

どこかのお屋敷には、大きな発見ともなる名画が眠っているのかも。そんな想像も膨らみますね。

メトロポリタン美術館展でマリー・ドニーズ・ヴィレールの作品を見てみよう


再発見されたことによって、同じ絵でも見方が全く変わります。

例えばこの絵のモデル、シャルロット・デュ・ヴァルドーニュは絵を描いていますね。
ヴェレールと彼女は、画家として歩んでいる友人なのか?
じっとこちらを見ているが彼女はどこを見ているのだろう。
部屋のひび割れた窓や、遠くに見える2人の人物は何を表しているのでしょうか?

こちらの絵は、11月から始まる「メトロポリタン美術館展 西洋美術の500年」で来日するそうです。
しばらく4点の注目作品のみの発表でしたが、先日他の出展作品の発表もありました。
公式サイトでもぜひチェックして、展覧会を楽しみに待ちましょう!

2021年11月13日〜2022年1月16日
大阪市立美術館

2022年2月9日〜5月30日
国立新美術館

▼展覧会の特設サイトはこちらです
「メトロポリタン美術館展 西洋美術の500年」

追記:2021年11月27日

展覧会の開催日に見に行ってきました!
こちらのヴィレールの絵、素晴らしかったです。
女性の後ろにある窓からかなり強い光が入ってきているのですが、その光で金髪がキラキラ透き通るように輝いていました。
そしてウエストの部分のピンクのリボン。
背中のリボンの結び目の辺りも光で透き通るように描かれていた。
しばらくそこから目が離せませんでした。
ぜひそんな部分もじっくりとご覧くださいね。

▼「メトロポリタン美術館展」に出ているこちらの絵についても書いてます。

▼メトロポリタン美術館展が良かった!と感動して、勢いで展覧会に登場する画家の出身地マップを作ってしまいました。(販売中)


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