西洋美術史

絵の横の解説パネルには何が書いてあるの?にお答えします -2

美術館に行ったらかならず見かける、作品の横にある情報や解説が書いてある”キャプション”。
どんなことが書いてあるのか?国立西洋美術館所蔵の絵画(上の写真です)を例にして2回にわけて説明しています。

▼前回は作品情報にはどんなことが書いてあるのかを見ていきました。
上下2枚パネルの上の部分です。


今日は下のパネルに書かれている作品解説のほうを見ていきたいと思います。

絵の横の解説パネルには何が書いてあるの?


まずこちらの作品は、画家アンドレア・デル・サルトが1516年頃描いた「聖母子」という絵です。

では、どんなことが書かれているのか?抜き出したのがこちらです。↓

デル・サルトはフィレンツェの盛期ルネサンスを牽引し、16世紀を通じて同市の美術に絶大な影響を与えた画家です。

この親密な聖母子像は、画家の成熟期の作品で、おそらく後の画家の妻をモデルとしています。

幼児キリストの頭部の描写は、実際の子供をモデルにする一方、筋肉質な肉体表現は、同時代の彫刻と共通しています。

本作と同構図の作品がカナダのオタワにあり、同時期に同じカルトンを基に制作されたと推測されます

デル・サルトがどんな画家だったのか、そして絵についての解説が書いてありますね。
小さなスペースですが、ぎゅっとコンパクトに重要な情報がまとまっています。


丁寧に読んでいくと、ここからさまざまなことがわかります。
でも専門用語が出てきたり、言葉が省略されていてちょっとわかりにくいですよね。

Yoko

美術にあまり詳しくない人には言葉の意味が分からなかったり、なぜその説明がここで書かれているんだろう?とモヤモヤが残ってしまうかな。
限られた文字数でまとめなくてはいけない、でもたくさん伝えたい、美術館の苦労も同時に感じました・・・


では次に、重要な言葉の意味や、なぜこの説明がここにあるのか?
もっと理解できるようになる4つのポイントを解説していきますね。

ここが分かればもっと伝わる4つのポイント

ではここから、4つのポイントを細かくみていきたいと思います!

盛期ルネサンス

「ルネサンス」とは、14世紀にイタリアのフィレンツェでおこった文化的現象。

フランス語で「再生・復興」といった意味をもった言葉です。

古代ギリシアやローマの美術を理想として真似ながら、新しいものを生み出していった時代のこと。

神の信仰が中心であった時代から、人間の知性や感情などが大切になっていくそんな時代でした。

その中で1500年から1530年ごろに、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロたち3大巨匠と言われているアーティストが出てきて、西洋美術の完成期とも言われるように頂点に達します。

その時期のことを「盛期ルネサンス」と呼びます。

デル・サルトは「盛期ルネサンス」の時代にフィレンツェで活躍していた画家でした。

画家の妻をモデルとしている

デル・サルトは聖母マリアを描くのに自分の奥さんをモデルにしただろうと書かれています。

彼は家族をモデルにすることを好み、その中には妻のルクレツィア・デル・フェデも含まれていた。

(カナダ国立美術館のサイトより)

最後のポイントでも説明するのですが、カナダ国立美術館にはデル・サルトのこの絵の別ヴァージョンの聖母子の絵があります。

その作品を見てみようと美術館のサイトにいってみたところ、家族をモデルにしているという上記の情報を得ました。

このように奥さんや恋人を聖母マリアを描くときのモデルにしていることってあるのですよ!

筋肉質な肉体表現は、同時代の彫刻と共通しています

デル・サルトの描くイエス・キリストは、赤ちゃんのぷにょぷにょした柔らかい肌ではなく、胸板厚く、太ももやふくらはぎがアスリートのようにたくましいですよね。

その特徴は、彼が活躍した時代の彫刻と同じなんですよと説明されています。

ルネサンスの彫刻は、たくましい肉体に感情のこもった古代のギリシア彫刻の影響を大きくうけています。

古代ギリシアでは人間の美しい体を、神々の姿、伝説上の英雄、当時活躍していた競技者や戦士などの彫刻で制作していました。

古代の彫刻の傑作といわれる「ラオコーン」がイタリアで発掘されると、ルネサンスの芸術家はその素晴らしい体の表現とまるで生きているような躍動感に驚き、自分たちの作品にも取り入れようとします。

カナダのオタワにあり、同時期に同じカルトンを基に制作されたと推測

このカナダのオタワというのは、オタワにある美術館のこと。

この絵がカナダのオタワにある美術館にありますよという説明です。

カナダ国立美術館がオタワにあるのですが、たしかにデル・サルトの描く「聖母子」という作品はあるようですが、絵の画像を公開していませんでした。

次にカルトンというのは、原寸大の下絵のこと。

下絵といっても、炭や鉛筆など単色で陰影をつけて描かれたものです。

カルトンは壁画、キャンヴァスなどにあてがって描かれたものを移しかえるために使われます。

ということは、この国立西洋美術館にある絵と、同じカルトンを使って描かれたであろう絵が、カナダ国立美術館に所蔵されている作品なのでは?と推測されているようです。

まとめ

どうでしたか?

キャプションには、とてもコンパクトに、でも重要なポイントをたくさんおさえた説明が書かれているのがわかりますね。

分からない言葉や、疑問に思ったところはメモでもして、後で検索することをおすすめします。

そして西洋美術史の知識は、こういったところで知ったポイントを繋いでくれるんですよ。

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