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西洋絵画の格付けについて

西洋美術の歴史の中で、17世紀から19世紀にかけて、絵画がその描かれているジャンルによって格付けされていました。
格付けを知ることが絵画を見ることと直接関係はないかもしれません。
しかし、その時代には定められた明確なランク付けによって、絵画が評価され、芸術家の評価も同様にその格付けに影響を受けていたのですから、覚えておく必要のある知識であることは間違いありません。

絵画の格付けとはどのようなものなのか、なぜジャンルによって格が違うのでしょうか?

絵画の格付けとは?

西洋絵画の格付け

上のピラミッドをみてください。
この絵画の階級制度のようなピラミッドは、絵画のジャンルによる格付けを表しています。
一番上の歴史画が格が高く、下にいくほど下がっていきます。

風景画好きなのになぜこんな下の方なの?

なぜ歴史画がトップなんだろう?

と意外に思われるでしょうか?

絵画にはメッセージがありそれを伝えるという目的があります。そのために明確なテーマと内容を持たなければならないという考え方がありました。

歴史画とは、古代の歴史、聖書の物語、ギリシア・ローマ神話などを描いた絵画のこと。歴史画には、大きなメッセージを伝えるべき役割を果たしています。画家は、メッセージを伝えるために、描くテーマの知識が必要になります。そしてそのメッセージを受け取る側、つまり鑑賞者も知識が必要になるのです。描かれる内容も画家も、そして鑑賞者も知性と品格が必要。そういった考え方から歴史画がトップに君臨していた理由です。

歴史画以下も描かれるものによってランク分けされています。

私たち人間を描いたものとして肖像画がランクインしますが、ここでの肖像画は主に王侯貴族を描いたもの。

風俗画もやはり人間の日常を描いたものなのでそのあとに続きます。人間世界にも階級があったように、絵画のジャンルでも階級で分けられています。

神を頂点として人間そして自然と続くように、次は風景画。そして無生物を描くということで静物画はその下として考えられたのです

絵画の種類

それでは、各ジャンルについてもう少し詳しくみていきましょう。

歴史画

歴史画とは前にも少し触れましたが、古代史、旧約・新約聖書、ギリシア・ローマ神話などの古典文学、寓意などのテーマを描いた絵画のことです。

歴史画を描くために画家はそのテーマを深く知っている必要があります。なぜなら、画家は見て描くわけではないからです。はるかかなた昔の古代ローマの絵を描くなら、当時の建物や人々の衣装について知識が必要です。
聖書の物語、例えば最後の晩餐を描くのであれば、キリストがいた時代の衣装などの知識はもちろんのこと、キリストや使徒12人がどのような態度や表情で晩餐のテーブルについているのか?テーブルにはどんな並びで座っているのか?晩餐の行われている場所はどのような場所なのか?などまで自分で解釈し、表現する必要があるのです。

さらに歴史画では、登場人物を描き、風景を描き、動植物を描き、他のジャンルの要素が全て入っています。

画家が描いた世界を今度は、鑑賞者が読み解きます。登場人物や場面などから、あの物語だなと見るものにも知識が必要となるのです。

さらに、歴史画は宮殿や教会などに飾られることが多かったため大型の作品が多く、そして格上のために大型作品を許されたジャンルだったとも言えます。

肖像画

歴史画に続いて肖像画がランクイン。
それは肖像画は人間を描いているものだからです。
旧約聖書では神は神像の通りに人間を創造したと表されています。神は創り上げた全ての自然や動物たちを支配させるために最後に人間を創造したのです。そうした考えかたから、人間の肖像画は歴史画につぐ上位にきているわけです。

とはいっても、王侯貴族、宗教関係者などの地位の高い人の肖像画が中心です。肖像画には、その人物がどのような人間であるかを伝える役割があります。しかしただそっくりに描けばいいというものではない。描かれた人物は自分をどのように見せたいのか、そこを画家は汲み取って描く必要もあるのです。

風俗画

風俗画とは日常生活の光景を描いたもの。
大きな歴史画に比べて風俗画は小型の作品が多いです。それは歴史画が宮殿や教会に飾られる目的であるように、風俗画は質素な家の壁に掛けられる目的であったためです。
描かれるのも農民や中流階級の日々の生活。労働風景、お酒を飲み語らう風景などが、中には道徳的メッセージが含まれているものもあります。

風景画

ヨーロッパでは風景画として1つのジャンルとして確立したのは17世紀ごろのこととなります。
古代のローマでは建築の装飾として風景を描かれることがありましたが、その後は途絶えてしまいます。ルネサンスになると、中世では金で表現されていた背景に風景を描く作品が出てきて、17世紀には重要な存在となっていったのです。そして19世紀になると風景画が多く描かれ、今に続く人気のあるジャンルになったのです。

静物画

植物・果物・食器・道具・狩りの獲物・水揚げされた魚等、などが描かれたのが静物画。
目の前にあるモノを正確に写し取ることが大切なので、歴史画のような豊富な知識や、ストーリーを伝えるための工夫も必要ありません。
そのため静物画は最下位に置かれました。

ジャンルとして成立したのは、17世紀、特にオランダでは大流行し発展しました。当時のオランダは貿易でバブルのような好景気。世界中から珍しい品々が集まりそんな繁栄の象徴を描いたのが静物画でした。

またモティーフに何らかの意味を持たせ、教訓的な意味を含ませた作品も多数制作されました。

絵画の格付けの背景

中世の時代までは画家や彫刻家は他の職人と同じように位置つけられて制作していました。それがルネサンスになると芸術家として地位がどんどんと向上していきます。

それは、彼らが古代の歴史や聖書の世界など目に見えない世界を描くことによるためです。歴史画のところでも説明しましたが、技術だけでなく豊富な知識が必要不可欠だからです。

1648年フランスでは、太陽王ルイ14世の時代に、16世紀のイタリア絵画を基準とした王立絵画彫刻アカデミー(芸術アカデミー)が誕生します。芸術アカデミーは様々が決まり事をつくるのですがその1つが絵画ジャンルの格付けでした。アカデミーの考え方は19世紀初め頃まで芸術の中心として影響を与え続けました。

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