Yoko

英国大学で西洋美術史専攻 日本の大学で文化支援専攻 海外.国内旅で多くのアートに触れる 2019年から対話鑑賞会・講座主宰しています。 美術史の知識だけでなく、対話型鑑賞で自分はどう感じるのか?を大切にするアート鑑賞を提案しています。

印象派仲間のピサロ、モネ、シスレーの水辺の絵を並べて見る贅沢

先日久しぶりに名古屋市にあるヤマザキマザック美術館へ!! 日本の好きな美術館の10位の中に入る一つ。 好きな理由は、ロココから20世紀の絵画の歴史が辿れるような作品が揃っていること。 そして展示室の空間の美しさ。まるでヨーロッパの美術館にいるような気分にさせてくれる壁紙、床の素材や美しいシャンデリアなど。 空いているので静かにゆっくりと見れるのもなかなかいい。そして絵画のフロアの下にはインテリアやガラスなど工芸品のコレクションが充実していることも。 カフェやレストランが揃っていて鑑賞後の時間も優雅に過ごせ ...

『ソロモンの審判』ニコラ・プッサン【365日絵のなかで旅をする】

今回の旅は「見事な裁き、ソロモンの審判を見にいく旅」 古代イスラエルの王、ソロモンはダヴィデ王の息子で、人々を守るため巨人ゴリアテを倒した勇者の子としても知られています。でもソロモンの真の偉大さは、彼の無比の知恵と公正さにありました。 見る絵画と言えばこの人ニコラ・プッサンが描いた「ソロモンの審判」を通じて、古代の裁きとその智慧を探りにいく旅です。 古代の裁き、ソロモンの智慧 The judgment of Solomon by Nicolas Poussin: image wikimedia commo ...

【絵を見る楽しさを教えてくれる本】安野光雄の旅の絵本II イタリア編

記事にプロモーションが含まれています 先日とっても素敵なプレゼントをもらいました。 安野光雄さんの『旅の絵本II』です。 この絵本は10冊のシリーズの世界の国を1冊にした絵本で、私がもらったのはイタリア。イタリアは私にとって美術の世界へと導いてくれた国。そのことを知って友人はイタリアをプレゼントしてくれました。 表紙にはどこの国か書いてないのですが、よく見て!畑が緑・白・赤の国旗になっています。 本の中に字はありません。絵をじっくりと楽しむ絵本なのです。 馬に乗った1人の旅人が、イタリア、トスカーナの緑の ...

イザベラ、またはバジルのの壺の世界を巡る旅ージョン・エヴァレット・ミレイ【365日絵のなかで旅をする】

今回の旅は、イザベラ、またはバジルの壺の物語の世界を旅します。絵に描かれた物語の世界の旅は、私の大好きな旅。ミレイの絵はその楽しみを存分に伝えてくれます。 今回は残酷な恋物語ですが、美しい絵の中に暗示をたくさん配置しながら、複雑なストーリーを1枚の絵で伝えてくれています。 美しい壁紙の室内で食事を楽しむ人々。部屋からは青空の庭園が広がって庭園の景色も見える豊かなひととき……に見えますが、本当にそう? 白いタイツの男性の表情をよく見てください!睨みつけるような顔でテーブルの右側に座る男女を見て、足で犬を蹴ろ ...

サージェントの肖像画と衣装の切っても切れない関係を見に行きたい!

私が肖像画を目の前にしたとき、まずざっと見るところは表情、ポーズ、そして衣装です。衣装は、時代や階級が何となく理解できるというのも大きいけれど、豪華さや繊細さに目を惹きつけられるというのが一番の理由かも。 上に重ねた服から下の生地の柄が透けていてうっとりしたり、こんなすごい靴履いてたの?!と吹き出しそうになったり、豪華なジュエリーに誰からもらったんだろうと想像したり、衣装だけ見るだけでも十分に楽しめます。 肖像画家として大成功したアメリカ人画家のジョン・シンガー・サージェント。彼の絵は衣装が本当に本当に素 ...

ネットラジオ「365日絵のなかで旅をする」をスタート

standfmという音声配信アプリ内でラジオ番組を始めました。 実際には昨年からスタートしていたのですが、一時中断していたので今月から再スタートとなります。ブログにもシリーズで書き始めた「365日絵のなかで旅をする」の記事を元にして、そこから2人で絵の中に入り込むように旅をするトーク番組です。 お相手をしてくれているのは、海外を旅したい理学療法士でもあるmikiさん https://www.instagram.com/miki.katou.oz/放送時間は、毎週月曜日の22時。のんびりとしたトークと絵の中 ...

「レイフ・エリクソン、アメリカを発見する」”幸運なレイフ”の新大陸発見の旅【365日絵のなかで”旅”をする】

今回の旅は1000年以上前の、新大陸発見瞬間への時間旅行。 絵の中では今まさに、レイフ・エイリークソン一が、北アメリカの東海岸の大陸を目にして、指を指して同行者たちに知らせている瞬間の場面です。左の方に確かに陸地のようなものが見えています。船は荒波の上で激しく揺れていて、空もどんよりしていますが、目指す場所は明るく輝いて見えている。 船から乗り出して見ている少年の足元には侵入した水も激しく動いている様子が。その背後には陸地を見ようと駆け上がる男性の姿も。船の中の興奮と荒波が発見瞬間をドラマチックに演出して ...

ウィリアム・ビーチーの「シャトルコックで遊ぶケネス・ディクソンの肖像」【365日絵のなかで旅をする】

今回の旅は肖像画の中の人々と出会う旅。肖像画に描かれた少年とバドミントンの歴史を見にいきます。 絵の中の少年、こんなに素敵な衣装をつけてバドミントンをして遊んでます。しかも真っ赤なラケットに、羽の先端も同じ色。なんだか目が離せなくなりこの絵を選んでしまいました。 ということで、今回はバドミントンの歴史を旅します! 絵のタイトルについている「shuttlecock」。これはバドミントンで使用される羽根つきの球(羽球)を指します。shuttlecockは、通常、羽根と軽い重り(たいていはコルク)でできています ...

ブリュージュの寄進者ーハンス・メムリンクの描くポルティナーリ夫妻の肖像【365日絵のなかで旅をする】

今回は、夫婦の肖像画から、550年前のブリュージュの裕福な銀行家、そして寄進者の世界を旅したいと思います。 ▼前回の「キリストの受難」の絵の下には、寄進者の肖像が描かれていたことを少しご紹介しました。 https://cosinessandadventure.com/hope-and-healing 描かれている人物、トンマーゾ・ディ・フォルコ・ポルティナーリ(1428-1501)は、フィレンツェの名だたる家系出身。彼はブルージュのメディチ銀行の支店長になるためにブルージュへ移住しました。一緒に描かれてい ...

ハンス・メムリンクの描く「キリストの受難」-希望と赦しの旅【365日絵のなかで旅をする】

キリストの受難のストーリーを一枚の絵画で見せている絵があります。15世紀にフランドルで活躍した画家ハンス・メムリンクの描いた「キリスト受難」です。ずいぶんと大きな絵なのでは?と思われますが、縦56.7x横92.2cmという想像するより小さいサイズ。その中にびっしりと描かれているのは、キリストがエルサレムに入場するところから始まり、復活までの物語。 この絵を希望と赦しの旅としたのは、メムリンクの絵はある特定のエピソードに焦点を当てているのではなく、全体でキリストの復活の意味や重要性を気づかせてくれたからです ...

サンタ・マリア・デッラ・サルーテ大聖堂/ヴェネツィア【365日絵のなかで”旅”をする】

ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナーはイギリスを代表する風景画家。ロンドンで生涯の大部分を過ごしているけれど、イタリアには1819年、1833年、1840年と3回旅をしています。 画家にとってやはりイタリアは行ってみないといけない場所なのです。 旅行をして戸外でスケッチすることが習慣だったので、イタリア滞在中も道具を持ってあちこちと動きながらスケッチをしているターナーを想像してしまいます。 絵を見てみると、目の前にはヴェネッツィアらしいたくさんの船が浮かぶ、カナル・グランデと言われる大運河が広がってい ...

ホッベマの遺したミッデルハルニスの並木道【365日絵のなかで"旅"をする】

ミッデルハルニス(Middelharnis)は、オランダ西部のグーレーオーフェルフラッキー島にある町。 ホッベマはそのミッデルハルニスのアルダー(カバノキ科ハンノキ属の広葉樹)の並木道を描いています。並木道の絵というとこの絵がすぐに頭に思い浮かぶくらい、のどかな田舎道の風景をこんなにも印象的にしているのはなんなのだろうう。 やっぱりまずは、絵の前に立つと自分も前にずっと続く道を歩いているような気分にさせる、遠近法。絵に奥行きと立体感をもたらす技術の”一点消失遠近法”です。 これを使うと、平面の紙の上でも物 ...

コンスタブルの描くワイブンホー・パークの昼下がり【365日絵のなかで”旅”をする】

晴れた夏の日のイングランドの美しい田園風景。ここはイギリス東部エセックス州にある広大な公園、ワイブンホー・パーク(Wivenhoe Park)。公園には湖があり白鳥が泳ぎ、たくさんの他の鳥の姿も見えます。右側には船に乗って網を広げている2人の人物も。船が傾いていてちょっと怖いくらいです。湖の周りには牛がのんびりと草を食べているゆったりとした時間が流れています! 雲が作り出す地上と湖の光と影が美しい。刻々とその影が動いていく様子が目に浮かぶようです。コンスタブルは雲を見て研究するのが大好きでした。観察をし、 ...

モネとアルジャントゥイユ【365日絵のなかで”旅”をする】

モネの足跡をたどりたい!と考えるとやはり一番最初に思いつくのはジヴェルニーではないでしょうか?でもその他にもモネにとって重要な場所が他にもあります。その一つが”アルジャントゥイユ(Argenteuil)”です。 モネは1840年にパリで生まれてから、このように生活の拠点を移動しています。パリ ⇨ ル・アーブル ⇨ パリ ⇨ アルジャントゥイユ ⇨ ヴェトゥイユ ⇨ ポワシー ⇨ ジヴェルニー アルジャントゥイユは、パリから電車で約15分の北西部、パリと同じように急速に発展しましたが、豊かな田舎の魅力も残し ...

ゴッホ最後の71日間/オーヴェールの教会【365日絵のなかで”旅”をする】

オーヴェールはゴッホが亡くなるまでの71日間を過ごした場所です。 弟のテオは、ゴッホを南仏サン=レミの精神病院から、兄が過ごすのに良い場所がないかと探していました。自分がいるパリに近く、それでいて田舎の場所。医師と友人を兼ねてくれるような人が看護してくれる安心して暮らせる場所。ゴッホのことを良く理解しているテオだからこその選択です。 ピサロの勧めもありテオが決めたのが、ここパリから1時間ほどのオーヴェール=シュル=オワーズです。 この場所は、セザンヌやピサロなど印象派の画家たちと交流のあったガシェ医師が住 ...